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新たに現れた入り口はゴブリン達のいたダンジョンと同じくレンガ造りであった。だが違うのは両側に松明が灯っており、当たりが薄暗い事だ。
もしニ十階相当の敵が出てきてもまぁなんとかなるだろうという根拠の無い自身と共に風の魔法に引っ掛かった敵へと向かって行く。
辿り着いた場所に居たのは、骨だった。所謂スケルトンだ。スケルトンの弱点は頭部にある核、これを斃さなければ復活してしまう。
俺は見つけたスケルトンに、松明の火を操りそう服してスケルトンを焼いた。どうやら火には弱いようで奴はそのままお陀仏だ。
強さ的にはゴブリン達のダンジョンで言う一階相当だと思う、つまり全く脅威にならないという事だ。ならば先に下まで行ってしまった方がいいだろう。
俺は少し早くなった徒歩で階段への道のりを進んだ。
このダンジョンでは一階層から三階層まではスケルトンのみだったが、四階層からはスケルトンウォーリアーが出てきた。ホブスケルトンというのはいなかったので、スケルトンの進化系がスケルトンウォーリアーなのだろう。思い思いの武器を持っているが、俺の周りには常に火の玉が浮いており、敵を見つけてはそれを射出している。今では風の魔法と組み合わせ、敵の位置とそこに至るまでの通路を風で読み取り、火の玉を遠くから相手にぶつける事が可能になった。そのため、殆ど道なりに地下への最短距離を移動しながらもフロアの敵を殲滅することに成功している。
そうして辿り着いた地下五階で、約半分ほど進んだところに中ボスが現れた。中ボスはやはりゴブリン達のところで現れたのと同じような布陣だが、ゴブリンウォリアーを中心としたスケルトンの集団である。またウォリアーは魔法を使うらしく手には杖を持っている。
残念ながら増幅した火の玉を相手にぶつけて瞬殺したので何の魔法を使うかまでは分からない。精霊魔法と言うのは本当に便利だ、ほんの少しの火であろうと、それを何倍にも増幅することも爆発させることも出来る、まさに意のままという奴だ。流石女神様がチートというだけある。
地下六階からは新たな敵が現れた。それはグールだ。奴らは灰色の皮膚をした殆ど骨と皮だけの存在である。だが腹だけが少し出ているため歪というか、まだスケルトンの方が視界にいれていてましだった。スケルトンの方が人間らしさが無いからかもしれないな。
グールも火に弱いのでそのまま焼き尽くす。自分一人だとかなり進むのが楽だ。楽だが、スピードとしてはユフに乗っていたほうが早いので、どっこいどっこいである。
地下八階にもなると、基本的に出てくるのはスケルトンウォーリアーとコマンダーだ。グールはグールのままである。コマンダーはかなり強い、一度他を殲滅して一対一でスケルトンから作り出した槍でのみ戦ってみたが残念ながらもし途中で精霊魔法を使わなければ負けていただろう。技量という意味では中々だ、そしてコマンダーの中にも魔法を使う者がいる、詠唱をしているのか歯がカタカタと揺れて魔法を放ってきたが、風で相殺して蹴散らした。それでもゴブリンウォーリアーが使っていた魔法と比べると天と地ほどの差がある、勿論スケルトンが強いという意味でだ。
敵の強さの調査をしながらも地下九階を抜けた。此処まで来るのに何日かかっているのかは数えていないので分からないが、優に一週間は超えている。なにせ魔物牧場の小屋で休んだ回数が七回は越しているはずだからだ。最近は湖の冷たい水で体を洗うのにも慣れてきた。流石にそのまま寝るのは嫌だったからな。
そして地下十階はゴブリン達のダンジョンと同じくボス部屋になっていた。扉を開き鑑定をしてみると、前衛にスケルトンコマンダーが五体、更にグールが五体、後衛に同じくコマンダーが五体、そして更にその後ろにはワイトがいた。今までスケルトンコマンダーは軽い鎧の様な物だったのに対して、ワイトはローブを纏い指には指輪を嵌めて、そして豪華そうな杖を此方に向けていた。因みにスケルトンは何もつけず武器も持たない、ウォーリアーはその状態に武器を持っている、そしてコマンダーになって初めて防具がつくようになっていた。
それは置いておくとして、俺は火の玉を部屋の中心に誘導し、そして増幅させて爆発させた。俺は正直これで全員倒せたと思っていた……だが、煙が晴れると此方に向い闇の塊が跳んできたので急いで風によるシールドで防御。
どうやらワイトは闇魔法でシールドを張ったようだ。俺はワイトとにらみ合いながらワイトの周りに火の玉を誘導する。するとワイトはまたも自信の周りに闇の防御を纏う。俺は防壁ともいえるそれを破壊するために爆発させ、そして防壁が無くなったところで風の刃を浴びせる。流石にこれは喰らったようで、ワイトと言えども中身は骨、骨格がばらばらになりカランカランと骨が地に落ちる。だが髑髏の目には未だ紫の淡い焔が奥に見えるので死んでいないことが分かる。俺は髑髏の前に火の玉を持っていき……。
「『テイム』」
テイムを実行し、そして成功させた。次の瞬間、逆再生でもしているかのようにワイトが元の姿に戻る。
「はぁ~、まさかコボルトにやられちゃうなんてなぁ~」
「まぁ俺はただのコボルトじゃないしな」
もとに戻ったワイトはそのまま床にごろんと寝転がるとそうぼやいた。
「だよね~、てかそれ普通の魔法じゃないよね? どんなカラクリなの? 教えてよ!」
いきなりがばりと起き上がったワイトが一瞬のうちに俺の近くに来て手を取りぶんぶんと上下に振っている。というか声からしてこいつ女性? しかも結構若いイメージだ。
「これは精霊魔法だから、そろそろ腕がやばいから!」
「は? セイレイマホウ? あはは~マスターってばお茶目~、精霊魔法は精霊しか使えないから精霊魔法なんだよ、定義としては体内の魔力を消費せずに周囲の魔素を使い魔法を発動させる、そんなの人や魔物にだって出来るはずが……はずが? あれ? でもさっきのは確かに、体内魔力減ってなかった……え? ほんとうに? ほんとにセイレイマホウ? 」
「だからそうだって」
「ねぇマスター? マスターの体どうなってるか解剖的な事がしたいんだけど?」
「は? いきなり何言って、そんなの却下に決まってんだろ!」
「だよね~、まぁいいや、面白そうなマスターだし、テイムされて正解ってわけだね」
正直骨がキャイキャイしててもなんも面白くないが、それでも魔法の腕は結構立つみたいだし、魔法を使うスケルトンのリーダーになって貰うか。
「今後お前には魔法を使うスケルトンのリーダーになって貰おうと思ってる、そのために名前を付けるぞ、名前はマティー」
「おぉ初っ端名前を貰えるとは、保有魔力が上がった! ありがとうマスター!」
マティーはそこで魔物牧場へと送り、そして俺はまた入り口の広間まで戻って来た。そしてこれから行うのはゴブリン達のダンジョンでも行った乱獲だ。本当は早く次に行きたいがな、なにせまた新しく扉が出来ているからな。というのも、今回はスケルトンたちだったので食事の改善が全くされていない、流石にグールは食べる気がしないしな。俺はテイムした皆が用意してくれた不味いゴブリン肉を牧場で食べて攻略していたが、そろそろまともな肉が喰いたいのだ。
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今回は最初にテイムしなかったので、最初を合わせて四週回った。今のステータスはこんな感じだ。
名前:――
種族:コボルトウォーリアー
スキル:『精霊魔法(地水火風限定)』『テイム』『魔物牧場』『鑑定』『槍術』
称号:『???』
特殊従属:<ジーン><ユフ><スン><マティー><><><><><><><><><><><><><>
従属:<ゴブリ×199><野良×109><ホブゴブリ×447><ウルフ×421><ゴブリンウォーリアー×598><ブラックウルフ×645><ホワイトウ×532><スライム×314><ゴブリンコマンダー×3><スケルトン×354><グール×731><スケルトンウォーリアー×465><スケルトンコマンダー×698><ワイト×3>
となっている。そして今俺の前には捕まえた剣を使う前衛のスケルトンコマンダーと一匹のグールがいる。
「お前たちはそれぞれ前衛のスケルトンのリーダー、グールはグールのリーダーとなってもらう、そのために名付けを行う、スケルトンの方はスーン、グールはジルだ」
「拝名仕った」
「分かりました、これから私はジルとなります、感謝申し上げます」
声から察するにスケルトンは男でグールは女だな。と言っても正直今の俺には男女なんて性別は関係ないけどな……。二人には直ぐに呼び出すが一度牧場へと行ってもらった。
俺は入り口広間にマティーとその配下――魔法を使うスケルトン――を呼び出した。そしてマティーにもゴブリン達と同じく此処でスケルトンをスケルトンウォーリアーにするように言っておく、そしてスーン、ジルと順番に呼び出して同じ命令をしてダンジョンへと入ってもらう。
隊を分けて呼び出したのは、前回のゴブリンおしくらまんじゅうと同じ轍を踏まないためだ。スケルトンやグールとおしくらまんじゅうなどたまったものでは無いからな。
にしても、俺の進化はしなかったな。経験値的には結構稼いでいると思うんだけどなぁ、まっなる時にしかならないか。ならさっさと次の入り口に入るとしよう。
そして俺はまた単身中へと進んで行った。