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起章:第二幕:今一番欲しい物。エキ○イト翻訳の機能。※変換できるかは別問題として。

起章:第二幕:今一番欲しい物。エキ○イト翻訳の機能。※変換できるかは別問題として。



「……ん」


 視界がぼやけ、集点が定まらない状態で目に飛び込んできたのは見知らぬ天井だった。朝のようで、部屋は明るく耳には小鳥の囀りが聞こえる、と思った頃には視界が徐々に鮮明になる。

 顔に当たるそよ風から、風の方を向くと窓が開け放たれており、花壇なのか菜園なのか植物が植木鉢に埋まっているのが見える。風からはなにかの香草だろうか、少し甘い香りが漂い、思考も徐々にまとまっていく。

 まとまりつつある思考で、自分が今どこにいるのかという問いに答えを見つけようとする。朝日が差し込む窓とは反対側に目を向けると、隣にもう一つベットがある。主はいないのか、そもそも使われていないのか、シーツや掛け物は清潔そのものだった。

 ベットの主を探そうと視線をさまよわせると、すぐに見つかった。黒いフード付きのローブのような物を羽織り、自分が寝ているベットのすぐ近くに腰掛、寝息を立てていた。装飾気のないフードを深くかぶり、表情がかげりよくわからないが、体つきから恐らく女性だ。

 なぜ自分がココに寝ているのか理解出来ていないが、記憶が正しければ、夜中の森の上に落ちていったのが最後の記憶だ。


「……助けてもらった、のかな…」


 お礼を言おうにも、相手は寝ているし、とりあえず身体を起こそうとすると、ギシギシと音が鳴りそうなくらい身体に痛みが走る。それでも寝ながら礼を言うよりは、起きて待っていたほうが良い、と思い身体に鞭を入れる思いで上半身を起こす。


「……ン…」


 ベットが軋む音に反応してか、フードの女性の頭が少し動き、同時に窓から風が入ってくる。目深くかぶっていた、フードは後ろにずれ落ち、綺麗な長い黒髪と共に、二十歳前後の女性の顔が露になる。

 美女だ、というのが最初に抱いた感想。次に顔のタトゥが気になった。深い青い色で、雪のように白い肌の顔に二つ、両頬に左右対称ではあるが同じタトゥが刻まれていた。

 スペードのマークを縦に伸ばしたような形に、内側に丸い点が一つ。何を意味しているのかはわからないが、もう一つ気になる所に目が移ってしまう。


「耳が長い……」


 ゲームや漫画などで、それとなく見聞きしていたエルフのような耳をしていた。軋む身体を起こすまでに何度か口から苦痛の短い声が上がったが、幸い隣で寝息を立てて座っている美女は起きなかった。

 身体を起こしたことで視点も高くなり、再度周囲を確認するが、見知らぬのは天井だけでなく、部屋内にあるものすべて、窓から見える物すべて、見覚えが無い。一通り視線を彷徨わせた後、再度隣で腰かけている美女をみやると、少し顎を引き上目遣いとなり、青い大きな双眸を見開き瞬きしていた。

 驚いた、というのもあったが、あまりの破壊力に思わずつばを飲んでしまった。お互いに瞬きしかできず、なんと言えば良いのか、全くわからなかった。


「……ネィカ、エゥウェリア?リィ・イニェーダ」


 怖かったのか、微かに美女の唇が動き、全く聞き覚えの無い言葉が飛び出し、首を傾げ苦笑するしかできなかった。少なくとも、英語ではなさそう、という知識をフルに活かしても、その程度の答えしか導き出せない自分の脳みそを疑いたい。

 苦笑を読み取ってか、数度瞬きをすると、ベット横の棚からコップを一つとり、両手で差し出してくるが、微かに震えている。


「…エゥルトゥ・エゥレトゥス?」

「ごめん、わからないよ」


 苦笑して、謝罪を行うが確実に伝わってないと思う。現に発した言葉に驚き、目を見開いている。目の前の美女も困ってか、顎に指を当て考えているようなしぐさをする。

 しばらく見つめていると、何かをひらめいたかのように、コップを指さし、


「ルトゥ」


 コップの事を「ルトゥ」と言っている、という意味に捉えていいのか、中に入っている液体を指しているのかはわからないが、とりあえずコップという事で理解する。

 次に、コップを口に着け、傾ける動作を取り、口から離す。


「レトゥス?」

「飲み物を飲め?」


 ジェスチャーを交えての会話に、自分の理解が正しいのか自信が持てず、声に出し確認をするが、当然伝わってはいない。


「ありがと……」


 とりあえず礼を言いコップを受け取ると、意味が通じて嬉しかったのか、笑顔になる。普通に可愛い。受け取ったコップを口に含む前に、どんな液体なのか確認するが、見た目は無色透明。普通の水に見える。

 次に鼻を近づけ臭いをかぐ。臭いからわかった情報は「どう考えても普通の水ではない」という答え。


 しかもこの臭い、どう考えても「モ○ダミン」の臭いという。つまり目の前の美女は、「お前、息が臭いからモンダ○ンを使ってくれないかしら?」と言いたいのか?泣きたい。


 液体の臭いを嗅いで固まっていた時間を疑問に思ったのか、首を傾げ不安そうな表情になる目の前の美女。時として男には貫かなければならない物がある、と聞くが、こういう状況なのだろうか、と考えつつも、コップを口に運び、一口分を口に含む。

 鼻から抜ける薄荷のような香を期待したが、最初に感じたのは、舌に感じる強い刺激だった。辛い。ただひたすらに辛い。目の前の美女も、一口分含んだ事に驚いたのか、目を見開き椅子から立ち上がり、ベットの下にあったのか、洗面器のような容器を差し出してくる。

 出していいのか?と思ったが、もう返事を待つ余裕もないほど我慢できないし、言えた状況でもない、そのうえ言えても通じない。


「ッ!!かっら!何だこれ!!」

「クィラ。レトゥス・ルキィーナ」


 苦笑しながらも、背中をさすってくれる美女に感謝しつつ、やはり言っている言葉がわからない。


 ほんやく○ンニャク的なのを期待したのだが、世の中うまく行かないらしい。


 咳き込みが終わりを告げると、美女が棚から別のコップを取り出し、近くの容器から液体を注ぎ。再度渡してくる。再度受け取り、同じ手順を繰り返す。色、茶色透明のお茶っぽい。臭い、甘い臭い。飲む前に液体に少し舌を付ける。問題なし。

 少し含み確認すると、甘い味が口内に広がる。今度は安全と理解して、コップを一気に傾け飲みほす。

 飲みっぷりが嬉しかったのか、笑顔でお茶っぽい液体が入っていた容器を掲げ、首をかしげてくる。恐らく「まだ飲む?」と聞いているんだろう。

 コップを差し出すと、嬉しそうに微笑み、注いでくれる。


「ありがと……って、通じないのか……」


 頭を下げると、動作を読み取ってか、目の前の美女も会釈のように頭を下げる。感謝を伝えるだけでも言葉が通じない事への壁を感じつつも、頭を下げるという行動が、全国……いや、世界?共通で良かった。

 二杯目を飲みつつ、目線を美女に合わせると、再び考えるような仕草をしたあと、胸元に右手を当てながら、


「リィ・イニェーダ。ルゥ・エゥネィメ?」


 知らないワードのオンパレードだ。とりあえず聞き取れたワードを聞き返す。


「いねぇーだ?」

「リィ・イニェーダ。フィリエン・クァル・イダ」


 苦笑しつつ放たれた言葉に、再度同じワードが聞き取れたが後半が違った。

 正直、限界だった。英語では無いと分かっても、英語のリスニング試験が毎度さんざんな結果だった事を思い出していると、美女は表情から察したのか、胸元にあった手の形を変え、自分自身を指さす。


「リィ・イダ」


 言葉を短く区切り、再度手のひらの形を変え、促すように差し出しながら笑顔で首をかしげる。


「ルゥ・エゥネィメ?」


 自己紹介をしたんだと、どことなく理解し、次に手のひらを差し出された、というのは「貴方は?」と尋ねているんだと思う。

 「リィ」というのはおそらく、「私」などの自分を指す時に用いる言葉で、「ルゥ」というのが「相手」を指す言葉。


「大柴尊……。りぃ・みこと」


 言葉が通じたのがよほど嬉しかったのか、笑みを一層濃くする。


「リィ・イダ。ルゥ・ミクォト?」


 何か少し名前がかっこよくなってる事に笑みがこぼれ、自分を指さしながらゆっくり伝える。


「リィ・ミ、コ、ト」


 最初は、「イニェーダ」と名乗っていた気がするが、おそらく「イダ」というのはあだ名の様な物なんだろう。発音が難しいと汲んだのか、あだ名を教えてくれたんだと思う。


「ミクォ……、ミコゥ……、ミ、コォ、ト。ンン、ルゥ・ミコト?」


 三度か発音を繰り返し、やっと納得がいったのか、一つ咳払いをしてから告げられる言葉は間違いなく自分の名前だった。

 頷くと、ほっとしたのか、ため息を一つした後、周囲を見やり謎の辛い液体が入っているコップを指刺し、苦笑する。


「レトゥス」


 わからん。首を振ると、察したのか、何故か隣のベットに入り横になり目をつむるイダ。


「リピア」


 眼を開け、身体を起こし、伸びをするが、「まだ眠たい」という仕草なのか目をこすっている。次にさっきの激辛水を手に取り、反対側の手で「少し」という意味なのだろう、親指と人差し指を伸ばし、近づけほんの少し口に含む。


 間接キス万歳。あとでもう一度、あの激辛水飲んでも余りある報酬がもらえる気さえする。


 などと邪な考えを抱いていると、口に含んだ途端「元気になった!」と言わんばかりにベットから飛び出し笑顔になる。察するに気付け薬とでも言うべきか、眠気を無くすための水なのだろう。現に、あの激辛水を口に入れてからは、頭がしっかりと働いているし、ある程度の余裕も生じている気がする。

 つまりこれが意味する事は――。


「二度寝をする習慣は無い、だと……?」


 これはちょっとした問題ですよ?こちらの世界(?)では、朝起きてすぐに活動しなくちゃいけないのですか?無理。絶対に無理。


 思わず口から飛び出した日本語に、驚いたという様子ではないが、首を傾げられ「ちゃんと伝わったのだろうか」という不安からか表情が少し変わる。大丈夫、という気持ちを伝えたくても、とりあえず頭を下げ、感謝の念を伝えると、再び微笑み席に着く。

 それと同時に、靴音を響かせ部屋に入ってくる人影。褐色系の肌に短い金髪の美女。イダよりは身長が少し高く、服装もイダとは大違いで動きやすさを重視したような服装だった。第二村(?)人の登場である。

 耳の形からイダとは違う人種なのだろう、と思い見つめるが、当人は気にせずといった風に歩き方が性格を表しているとでもいう様な、めんどくさそうに眼をつむったまま歩いてくる。

 手にはさきほど洗面器のような器に布をかけ、


「イダァ。ニュリンク・トゥ・クィロス・ミスァ……」


 恐らく、イダの名を伸ばすように呼んだ、くらいしかわからなかったが、ココにきて初めて目が合い、綺麗な碧眼を見つめ、吸い込まれそうになるがお互いに数度瞬きをして固まり、一瞬で終わる。


「イダッ!!ミュスカス・フェヴィアリッ!!」


 イダを視界に捉えてから、金髪美女は鋭く叫び、手に持っていた物を放り投げ、腰に吊っていた短剣を抜き、床を強くけり間合いを詰められる。


「ッ?!」

「フェリア!!ウェティアッ!!」


 イダが自らの頭に両手で振れ、何かないのを確認して、驚くと同時に何かを叫んだというのはわかったが、他は一瞬の出来事で、まず最初に自分に短剣が刺さってないかの確認をした。


 頭、首、肩、両手、胸、腹、息子、両足。オールグリーン。怪我や痛みは……ない、ないが短剣は股の内側に、ベットであろう寝床を貫通していた。息子までほんの数センチ。脚開いてなかったら、たぶん足に刺さってた。

 落ち着け、俺。イージーだ、まだ一度も使ってない息子。穢れを知らない息子。自慢の息子。お前は無事だ……。そして、股間の短剣よ、おぬしにエクスカリバーの名を授けよう。


 感傷に浸り、次にエクスカリバーの持ち主を探すと、意外な光景が眼前に広がっていた。イダに組み強いられ、身動きが取れないといった様子で僕のベットに顔を伏せていた。

 横顔しか見えない顔にはさきほどまでは無かった、深緑色の雷のような模様が浮かび上がり、明暗を繰り返す。そして耳も先ほどまでは普通の人に見えたが、今はイダに似た長くとがった耳へと変わっている。

 情報を整理しようにも、何から手を付ければよいのかさっぱりで、事の成り行きを見守るくらいと、息子の位置を少し正すくらいしか出来なかった。


「イダ。エゥルゥ……アンプラ・リィ――」

「リュスカス。ルゥ・フィキア・スィア。ヴィトゥ・ヒァン・フィクアリマ……。ヒァン・フィルカス」

「イダッ!!」

「フェリア。リィリアス」


 キッ!!と効果音が聞こえてきそうな程の視線を、金髪美女から向けられ、キュンッ♪としないので自分がM属性ではない事を理解し、イダを見る。組み強いていた手を金髪美女から離し、拘束を解く。

 その手で、エクスカリバーを引き抜き、刀身を見つめ、血がついてない事をほっとしたのか苦笑し、金髪美女へ渡す。エクスカリバーを受け取った金髪美女は、再度俺を睨んでから鞘に納め、床に散らばった物を放置し、ベットを挟んでイダの反対側に立ち、壁に背を預ける。

 移動を終えたのを見つめてから、イダは頭を下げた。


「スミュィ・エゥミコト」


 頭をあげ、反対側にいる金髪美女を指さす。指さされた金髪美女はただでさえ気難しそうな表情が、眉間にしわを寄せ、一層濃くなる。


「ヘァン・フェリア。リィ・フィキアール。……フェリア・アリアール――。アスクィ・レコッディス」


 「リィ」と「ルゥ」しかわかってない身としては全く意味がわからない。重ねて、左側からはフレンドリーなオーラを感じるが反対側からは敵意以外なにもくみ取れない。なにこれ、どういう状況?


「…………フェリア?」

「チッ――。……リィ・フェリア」


 イダが金髪美女の名前であろう名を口にすると、舌打ちと共にそっぽを向き短く名前を告げられた。確実に機嫌は最悪な状態で。暫く見つめていると、フェリアは顔の向きをただし目線が合うが、眼は口ほどに物を言うらしく「あ?なんか文句あんのか?」と言いたげだった。

 イダはイダで「やれやれ、全くこの人は……」と言いたげに、ため息をもらし、首を振るだけだった。とりあえず目が覚めて、わかったことはイダとフェリアという人物。イダはともかく、フェリアには完全に歓迎されていない事だけは理解できる。しかも命を狙われるほどに。



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