第001話 成人の儀
ライルは心躍っていた。
どんなギフトスキルがもらえるのだろうか? どんな職業につくことができるのだろうかと。
そう、今日は月に一度の成人の儀の日なのだ。
ライルは孤児院で育った。今まで最低限の生活しか送ってこれなかったが、与えられるスキルと職業によっては裕福な生活ができるだから、その逆も然りだが。
「今月の成人の人はこちらに集まって下さい」
シスターに言われ、街の成人に成った者たちは一箇所に集められた。
「では、これから成人の儀を行います。今から神父様がフェアリース様に祈りを捧げますので皆さんも一緒に祈って下さい」
(フェアリース様、良いギフトスキルと良い職業をお与え下さい)
「フェアリース様、成人となったものに祝福をお与え下さい」
神父がフェアリース様に祈りを捧げると成人たちが光りに包まれた。
「祝福は与えられました。皆さんステータスオープンと念じてみて下さい、さすれば、ステータスプレートが現れ、自分の能力が確認できるでしょう。与えられた能力に感謝し、新たな成人として恥じることのないように生きて下さい」
ライルは期待しながらステータスオープンと念じた。
名前:ライル
種族:ヒューマン
性別:♂
職業:荷物持ち
Lv.15
HP:150/150
MP:150/150
STR:30
VIT:30
INT:30
MND:30
DEX:30
AGI:30
LUC:9
スキルポイント:28
ギフトスキル:<能力減少無効Lv.->
ジョブスキル:<アイテムボックスLv.1(0/1000)>
スキル:剣術Lv.1(1/20)、解体Lv.5(12/60)、料理Lv.6(18/70)、生活魔法Lv.-
(げっ、よりにもよって最下位職の荷物持ちだよ。ギフトスキルも意味わからないやつだし。せめて運び屋だったら本当に優秀な荷物持ちとして優遇されたんだけどなあ)
ちなみに、運び屋のジョブスキルはマジックボックスでSTR×最大MPのKg分の荷物を収納できる。だが、アイテムボックスはSTR×最大MPのg分の荷物しか収納できない。つまり現時点で、4.5kg分の荷物しか収納できないのである。これだと、普通に袋に入れて担ぐのと変わらない。一応アイテムボックスのレベルが上がると収納量は10倍ずつ上がっていくと言われているが、必要なスキルポイントが膨大なためアイテムボックスLv.3以上の持ち主は歴史上いない。
ステータスの上昇値はレベルが10の倍数のときに20上がるが、通常は2と無職のときと変わらない。だがレベルアップに必要な経験値がレベルが上がるにつれ、他の職業よりもはるかに多くなるため、特に強くなるわけでもない、本当に荷物持ちしかできないのだ。
まあ、それでも冒険者ギルドに登録し迷宮に荷物持ちとしてついていくだけでも最低の賃金は保証される(命の保証はないが)孤児院での暮らしよりはマシな生活はできるのだ。
(気は進まないが仕方ない、荷物持ちとして冒険者ギルドに登録しに行こう)
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「冒険者ギルドにようこそ。初めてで成人したてのようだから、冒険者登録かな?」
「はい、冒険者登録をお願いします。職業は荷物持ちです」
「荷物持ちか、最初は大変だけど、レベルが上がれば容量も増えるから、感謝されるようになるよ。頑張ってね。」
「はい、頑張ります」
「じゃあ、冒険者ギルドについて説明していきますね。まず、ギルドカードについてです。初回発行は無料ですが再発行には金貨1枚いただく事となっております。冒険中、死亡した冒険者を発見した際はギルドカードの回収をお願い致します。ギルドに届けていただければ謝礼をお渡ししております。装備品などはご自分のものとされて結構です。次にギルドランクについてです。ギルドランクはG、F、E、D、C、B、A、S、SS、EXの10段階に分かれており、Fランクまでが初級でカードの色は白、次にE〜Cが中級でカードの色は青、B、Aが上級でカードの色は赤、S、SSが特級でカードの色は銀、EXは超特級と言われ世界に4人しかいません。カードの色は金です。初級、中級、上級、特級、超特級ではギルド提携店でのサービスが異なります。初級で10%割引、級が上がるごとに5%ずつ割引率が増え、超特級では30%割引になります。ただし、緊急討伐依頼がでた場合は、指定ランク以上の人は応じない場合、罰金とランクの降格が有ります。主立ったところは以上となります。細かな規定については、こちらの冊子にまとめてありますので、時間のある時に目を通しておいてください。なにか、質問はございますでしょうか?」
(荷物持ちじゃあ上がってせいぜいFランクだから緊急招集なんて関係ないな)
「初心者講習があると聞いていたんですが、受けられますか?」
「はい、成人されたばかりの方には初心者講習を受ける権利があります。初心者講習を受けられると装備のセットをお渡しすることとなっております。受けられるようですので、こちらの札を持って、裏の訓練場に、お進み下さい。ほかは大丈夫でしょうか?」
「はい、大丈夫です。初心者講習を受けてきます。ありがとうございました」
ギルドの建物を抜けて裏の訓練場に行く。初心者講習受付の看板があったのでそこに向かった。
「こちらは初心者講習の受付です。今日は簡単な戦闘訓練とモンスターの解体の講習を行います」
「はい、よろしくお願いします」
初心者講習は本当に簡単な戦闘訓練とモンスターの解体で終わった。終了したら希望した片手剣と革の防具、解体ナイフをもらった。
今日はもう依頼を受けられる時間ではなくなったので、ギルドの簡易宿泊所に無料で泊めさせてもらうことにする。
早く稼げるようになっていい宿に泊まりたいもんだ。