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#098「勃牙利国」

舞台は、寮の自室。

登場人物は、山崎、吉原、渡部の三人。

「私の父でしたら、今はブルガリアにいますよ」

「ブルガリアか」

「東欧だね」

「実は先週、ダマスク・ローズを使った品物が届いたんですけど、お裾分けするほどの量ではなかったもので」

「いやいや。別に、何か貰えることを期待して言ったんじゃない」

「そうそう。ちなみに、どんな物だったの?」

「オイルと、ウォーターと、ジャムの三点です。美容と健康に効果があるとされていて、現地でも女性人気が高いそうです」

「フゥン。ブルガリアに、そんな名物があったとはなぁ」

「印象に残ってるのは、彫りの深い顔をした力士が、ヨーグルトのシー・エムをしてたことぐらいだったから、意外だね」

「日本にヨーグルトが普及したきっかけは、一九七〇年の大阪万博のブルガリア館ですよ」

「へぇ。日本でヨーグルトが食べられるようになって、まだ半世紀も経ってないのか」

「人類の進歩と調和の祭典が、日本の食卓を変えたんだね」

「知られざる歴史ですね」

「ブルガリアの国旗って、どんなデザインだったかなぁ」

「三色旗だよね?」

「上から、白、緑、赤のトリコロールです。白は平和、緑は豊かさ、赤は勇気を表しているそうですが、白はヨーグルトを、緑は豊かな自然を、赤はバラと解釈して覚えても良いと思います」

「ブルガリアは、ブルガリア語か?」

「そうだよ」

「スラブ系の言語で、マケドニア語、セルビア語、ロシア語によく似ています。文字も、キリル文字を使うんですよ」

「あぁ、あのアルファベットもどきか」

「その言いかたは失礼だよ、山崎くん」

「ロシア人からクレームが来そうですね」

「恐ロシア。あれ? ブルガリアは、ユーロの国だっけ?」

「イー・ユーには加盟してるけど、ユーロは使えないよ」

「レフという通貨が使われています。補助通貨はスティンキで、百スティンキが一レフです」

「百銭で一円みたいなものだな」

「これだけ話題に事欠かないのに、今ひとつ、日本での知名度が低いよね。どうしてなんだろう?」

「周辺を、ルーマニアやギリシャやトルコといった、キャラクター性の濃い国に囲まれているからでしょうね」

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