#090「赤瓦屋根」
舞台は、用務員室。
登場人物は、山崎、吉原、渡部、辺野古の四人。
「これは、どう見ても」
「屋根瓦だね」
「状態は良さそうですね」
「裏を見てご覧」
「裏?」
「あっ、何か書いてある」
「カリグラフィーですね。綺麗なものです」
「読めそうかい?」
「楷書体でないと読めないから、パス」
「僕も、この手の装飾文字は苦手だなぁ」
「ウゥン。どうやら最初の数行は、パングラムのようですね」
「パングラム?」
「前に、文字を入れ替えて、別な言葉を作るゲームをしたが」
「そっちは、アナグラムだよ、山崎くん」
「パングラムとは、すべての文字を使って、一つの文を作ることです。カリグラフィーの練習としては、定番ですね」
「いろは歌のようなものか」
「赤い屋根って、目立つよな」
「赤い屋根の建物は、遠くから見ても映えるよね」
「青い空とも、緑の森とも、コントラストが高いですよね。ドイツのローテンブルク、モンテネグロのコルト、フランスのマルセイユ、セルビアのポジャレバツ、イタリアのベネチアやボローニャ。あと、クロアチアのドブドブニクも外せませんね」
「沖縄でも、伝統家屋の屋根は赤い」
「どうだ? 解読できそうか?」
「そばに誰かがいると気が散るのなら、僕たちは、先に食堂に行くけど?」
「すみません。途中までは解読できそうなのですが、どうも、ここから暗号になっているようなのです。書くものが欲しいですね」
「裏紙なら、束ねて捨てなきゃいけないほどあるから、持ってこよう。ペンは、その辺にあるのを適当に」
「サンキュー。――俺たちに、何か手伝えることは?」
「助かります。――三人で手分けできるなら、何でも言って」
「ありがとうございます。――それならですねぇ。今からアルファベットを書いていきますから、私が言った文字数分だけズラして書いてください。例えば、エス、ディー、ゼットから一文字なら、ティー、イー、エーという具合です」
「簡単な作業だな」
「うん。それぐらいなら、僕たちでも出来そうだ」
「二時間。いや、九十分もあれば、解読できると思いますから、お願いしますね」




