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#086「秋季更衣」

舞台は、渡部家。

登場人物は、渡部、清美、愛実の三人。

「クリーニングに出してた冬物が、昨日、帰って来たの。今は、カバーを外して吊るしてあるんだけど、クローゼットに収納するのを手伝ってくれない?」

「いいですよ」

「ジャケット、ブルゾン。この辺は、すぐに必要だから、手前のほうがいいわね」

「ウール・コート、モッズ・コート、ダウン・コート。これは真冬用ですね。奥に掛けておきます」

「ピー・コート、チェスター・コート。出番は、もう少し先ね」

「ニット類は、型崩れしないように、ケースに入れておきますね。トレンチ・コートは、どうします?」

「すぐには必要なさそうだけど、朝夕が冷え込むようになったら、一枚欲しいのよねぇ」

「春先と秋口は、寒暖差が大きいから、服装に困りますよね」

「そうなのよ。それに、天気も変わりやすいから、置き忘れしやすいの」

「傘に、マフラーに、手袋にと、持ち物が増えますからね。――ダウン・ベストやツイード・ジャケットと並べておきますね」

「季節が移り変わるのは風流だけど」

「結構なことばかりではありませんね。上着類は片付きましたから、部屋に戻りますね」

「おっと。そう、易々とは帰さないわ。今よ、愛実っ」

「わっ、危ない」

「ヘッヘーン。捕まえた」

「不意打ち作戦、成功ね」

「ソファーに突き飛ばした上に、ガムテープで両手を後ろ手に拘束するとは、一体、何の真似なんですか? 外しなさい」

「冬服になる前の、ラスト・チャンスだもんね」

「拘束を解いて欲しければ、あたしたちの言うことを大人しく聞くことね」

「嫌な予感しかしませんが、何が目的なんですか?」

「決まってるじゃない」

「もちろん、これを穿いてもらうのよ」

「一介の男子高校生として、非常に抵抗が強いのですが」

「そんな長い睫をして、よく言う」

「絶対、似合うんだから。任せなさい」

「誰か、助けて」


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