#085「半夏生談」
舞台は、寮の自室。
登場人物は、山崎、吉原、渡部の三人。
「残暑が厳しいな。茹で上がりそうだ」
「九月に入ったのに、蒸し暑い日が続くよね」
「徐々に日照時間が短くなってますから、もう少しの辛抱ですよ」
「暑さ寒さも、彼岸まで。今年の秋分は、二十二日か」
「春分は三月二十日で、夏至は六月二十一日だったね」
「そして冬至は、十二月二十一日です」
「春分は牡丹餅を作り、秋分は御萩を作り、冬至は南瓜を食べて柚子湯に入るとして、夏至は?」
「夏至には、特に風習がなさそうだね。渡部くんは、何か知ってる?」
「全国に広く知られている風習はありませんね。ただ、京都では、夏越祓として、水無月という和菓子を食べますし、大阪では、豊作祈願として、蛸を食べます。稲が八方に根を張るように、ということですね。他にも、お餅を食べる地域もあります」
「そうか。農家は、田植えの時期だったな」
「暑い中、大変だよね」
「稲刈り期の台風を避けるためには、夏至から半夏生のあいだに済ませなければいけませんから」
「半夏生で思い出した。香川には、半夏生うどんがある」
「本当に、うどんが好きなんだね」
「それも、コシが強い麺でないといけないんですよね?」
「讃岐うどんならな。でも、うどんと言えば讃岐とまでは言わない」
「稲庭うどんや、伊勢うどんもあるもんね」
「きしめんもありますよ。ロング・パスタに、カッペリーニ、フェデリーニ、スパゲッティー、フェットチーネといった種類があるのと同じですね」
「スパゲッティー以外は、呪文にしか聞こえない」
「よく、噛まずに言えるよね」
「お喋りな三人に囲まれて育ちましたから」
「麺類だけに、スルッと言える訳か」




