#007「針小棒大」
舞台は、寮の食堂。
登場人物は、山崎、吉原、渡部の三人。
「山崎くん。右の人差し指から、血が」
「あぁ。さっき、プリントの端で切ったんだ。止まったと思ってたんだが」
「軟膏を、お貸しします」
「これくらい、唾でも付けとけば大丈夫だ」
「雑菌が入ったら、どうするんです。洗面所で、洗い流して来てください」
「平気だってのに」
「行ってください」
「わ、分かった。そう、睨むなって。行けば良いんだろう、行けば」
「お待たせ。どこへ行くんだい、山崎くん?」
「洗面所。すぐ戻る」
「いつの時代の衛生観念なのでしょう」
「下着やハンカチでも、洗い忘れてたの?」
「違いますよ。切り傷を、洗いもせずに放置してたんです」
「そんな大怪我をしてるようには、見えなかったけどなぁ」
「洗い流してきたぜ、ドクター」
「身体は大事にしてくださいね。はい、おしまい」
「何だ。怪我したのは、指か」
「渡部は大袈裟だよな、吉原」
「山崎さんが、大雑把過ぎるんです」
「まぁ、まぁ。頭痛の種を蒔かないでほしいところだよ」
「頭痛薬の世話になりすぎだ。そのうち、効かなくなるぞ?」
「山崎さんも、他人のことを言えませんよ?」
「食べ過ぎで、胃腸薬のお世話になってるもんね」
「いつもじゃねぇんだから、大丈夫だ」
「食べ過ぎないことを覚えないといけません」
「腹八分目だよ」
「ここの料理が絶品なのが、いけないんだ」
「三好さんのお料理が美味しいのは、事実です。しかし、だからといって、それを言い訳にしてはいけません」
「追及は、そこまでにしなよ。そろそろ、昼休みが終わるから」