#077「作業目標」
舞台は、山崎家。
登場人物は、山崎、聡司、吉原、渡部の四人。
「夏休みも、あと十日か」
「早いものだね。それで、この公式だけど」
「この、薬のカプセルみたいな記号は何だ?」
「シータ。この場合は、任意の角度を表してる」
「エータ、ベータ、シータ。似たような名前を付けるなよ」
「僕が付けた訳じゃないよ。どれもギリシャ文字なんだから」
「アルファベットでは駄目なのか?」
「数が足りないんだよ。ほら、手を動かす」
「せっかく高松に来たっていうのに、勉強ばっかりで、面白くないだろう?」
「観光は、山崎くんの勉強が終わってからって、渡部くんと決めたから」
「そういう渡部は、今、何をしてるんだ?」
「下で、聡司くんの勉強を見てる。他人のことは気にしなくて良いから、目の前の課題を片付けることに集中する」
「こんなにあるのに、今日中に終わらないって」
「心配ないよ。日付変更まで、あと十時間あるから」
「寝る寸前まで続ける気かよ」
「最悪の場合、徹夜だね」
「それだけは、何としてでも避けたいな」
「それなら、さっさとやってしまおう」
「まだ十日あるんだから、まだ焦るときじゃないと思うんだけど」
「焦らなくても良いように、早めに終わらせておくのです。今度は、こちらの公式を使います」
「この三角定規みたいな記号は、何だっけ?」
「デルタ。ここでは、増加量を表しています」
「ガンマ、ラムダ、デルタ。変な名前ばかりだな」
「手が止まってますよ、聡司さん」
「遠路はるばるやってきたんだ。部屋に閉じ篭ってないで、高松の魅力に触れないと。案内するぜ?」
「ノルマが済むまでは、外に出しませんよ」
「今日中に、これ全部、終わるかなぁ」
「今日という一日は、まだ十時間ありますから。日付が変わる前には片付きますよ」
「夜まで続ける気?」
「終わらなければ、明け方まで続けるまでです」
「それは、勘弁して欲しいな」
「私も、それには気が進みませんから、サクサク進めますね」




