#076「午後二時」
舞台は、渡部家。
登場人物は、渡部、清美の二人。
「私学受験で女子校に進むなら、いい加減、準備させないとね」
「この近くの学校となると、大きく二種類の系統に分かれますよね」
「質実剛健な自立系か、それとも博愛伝道のミッション系か」
「キャリアかマリアか、ですね」
「決めるのは本人だけど」
「気になりますよね」
「中学受験しなかったのは、あたしや博巳と同じだけど」
「当分ここに暮らすことが分かっていたなら」
「受験させても良かったわよね」
「まぁ、今になってから言えることですよね」
「まぁね」
「お姉さんは、キャリア系を選びましたけど、愛実にも向いてると思いますか?」
「あくまで私見として聞いて欲しいんだけど、はっきり言って、愛実には合わないと思うわ」
「それは、何故でしょう?」
「何故と言われると、答えに窮するわ。直感で、あの気風には馴染まないと思うだけよ」
「直感が正しいとは限りませんけど、経験則を馬鹿には出来ませんから、悩みどころですね」
「そうだ。イニシャル・ケーの法則って覚えてる?」
「今年に入ってからスキャンダルで取り沙汰された人物には、名前にケーが含まれているという話ですね」
「あれだって、直感では正しいと思うけど」
「ケーが含まれるからといって、必ず取り沙汰される訳ではありませんし」
「ケーが含まれていないのに、取り沙汰される人物もいるものね」
「リンカーンとケネディーの運命説と同じですね」
「誰だって、何かしらの共通点があるものよ」
「そして、その裏には、共通点の何倍もの非共通点が隠れているものです」
「そう考えると、あたしの直感が外れてる可能性は、決して低くないわ」
「当たってる可能性も、決して低くありませんよ。エビデンス一辺倒になるのではなくて、ヒューマリスティックと使い分けることが大切です」
「ただし、経験のアップグレードを怠ってはいけない、という訳ね。話が飛躍するけど、ずんだ餅は残ってるかしら?」
「今朝、愛実がお友達の家に持って行きました。あとは、笹かまぼこだけです」
「……部屋にいるから、帰ったら知らせて。小一時間ほど言いたいことができたわ」
「進路以外にも、積もる話がありそうですね」




