#072「伊達酔狂」
舞台は、仙台。
登場人物は、山崎、吉原、渡部の三人。
「木曽路は、すべて山の中である」
「夜明け前に、おじさんに叩き起こされたと思ったら、魚市場を見学って」
「叩き起こした張本人は、ソファーでグッスリ寝てますけどね。でも、早起きした甲斐があったでしょう?」
「何を言ってるかは理解できなかったけど、活気があったね」
「そのあとの昼食も、文句なしだな。初日の牛タンも絶品だったけど、今日の鱶鰭も絶品だった」
「そうでしょう」
「素材を見ただけでは、食べられそうに見えないかったんだけど、調理されて出てくると、美味しそうに見えて来るから不思議だよね」
「初めて食べようと考えた人は、よほどのゲテ物好きだな」
「美食家と言ってくださいよ」
「それにしても、気仙沼に行くには、一度、岩手県を経由しないといけないとは知らなかった」
「ドアにボタンがあるのも、寒冷地ならではだよな」
「思わぬ発見があって、面白いでしょう? そうそう。商店街では、お店のかたと会話が噛み合わないことがありましたね」
「地元訛りは、もはや外国語だよ」
「ンだからぁは同意で、じゃがいもは穴開き靴下だっけ?」
「ンだからぁ」
「ややこしいよ」
「普通にしてくれ」
「フフフ。きずな広場は、どうでしたか?」
「津波の高さを肌で感じたよ」
「あの高さの波が押し寄せてきたんだもんな」
「恐ろしい話ですよね」
「恐ろしいと言えば」
「ん? あぁ、これも違う意味で恐ろしいな」
「私が物心付いた頃には、すでに伯父さんは、こんな感じでした」
「サングラスに」
「奇抜なイラストがプリントされたティー・シャツ」
「一体、どこで買っているんでしょうね」




