#006「合縁奇縁」
舞台は、寮の自室。
登場人物は、山崎、吉原、渡部の三人。
「結局、三人のままなんだな」
「編入生があれば、四人目としてこの部屋に入るとのことでしたけど」
「武藤寮監から音沙汰がないところを考えるに」
「編入生は、居ないみたいだな」
「もうしばらくは、二段ベッドを独占できますね。どちらか、私の上段に移りますか?」
「僕は、下段じゃないと落ち着かないから、このままでいいよ」
「俺も、吉原の上段じゃないと落ち着かないから、そのままで」
「それでは、現状維持ということで、よろしいですね?」
「賛成」
「俺も、賛成」
「はい。それでは、カバーとシーツを掛けましょう。はい、二人の分」
「枕と、布団と、ベッドの三枚だね。はい、山崎くん」
「どうも。それにしても、こうして一つ屋根の下で共同生活をするなんて、不思議な縁だよな」
「生まれも、育ちも、全く違いますからねぇ」
「性格も、外見も、だね」
「もしも、俺たち三人が同室にならなかったら、どうなってたんだろうな」
「そもそも、それぞれが地元の学校に進んでいたら、出会わなかったでしょうね」
「そうだね。たとえ、この学校に進学したとしても、同じクラスになるとは限らないよね」
「それだけでも、四分の一の確率だな」
「三人とも同じクラスになる確率は、十六分の一ですよ」
「一年生から、やり直さないといけないね、山崎くん」
「四クラスだろ? あとの十二は、どこから来たんだ?」
「三人それぞれに四通りの選択肢あるから、分母は、四の三乗で六十四」
「そのうち、三人とも同じクラスになる組み合わせが四通りだから、分子は四。約分して、十六分の一だよ」
「あとで、紙に書いて説明してくれ。さっぱり分からん」
「三人揃って進級できる確率も、考慮すべきかもしれませんね」
「更に、確率が低くなるね」