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#067「船中協議」

舞台は、船の中。

登場人物は、山崎、敦史、聡司の三人。

「珍しく、雑誌や漫画以外の本を読んでる」

「しかも、分厚い」

「うるさい。三年生は始業式の日に進路希望調査表を出さないといけないから、その参考資料として配られたんだ。お前たちも三年の夏になったら、これと同じような本を渡されるんだぞ」

「大学と専門学校の一覧か。あっ、試験科目も一緒に載ってる」

「進路かぁ」

「十七や十八で、将来のことを決めねばならないんだから、理不尽極まりない」

「一度レールを外れると、戻れないからなぁ」

「何者でもないがゆえに、何にでもなれるし、何でもできるのに。アタッ。何故、叩く?」

「その『俺、今、いい事言っただろう?』って顔が、腹立つんだ。――あと、就職する場合は、こっちだ」

「もう一冊あるのか」

「うへぇ。この中から候補を選ぶのか。目を通すだけでも、夏が終わりそうだな」

「気長にやるしかないだろうな。まっ、他にやらなきゃいけない課題もないからな」

「えっ?」

「レポートとか、作文とかは?」

「そういう課題は、春休みで終わったんだ。授業も、二学期からは、ほとんど自習に近くなるそうだ」

「何だよ、それ」

「ズルイぞ、三年生ばっかり」

「ちっともズルくない。こっちは進路という、頭の痛い問題に悩まされてるんだからな。あぁ、駄目だ。これ以上、文字の羅列を見てたら酔ってしまいそうだ」

「まぁ、船の中で読むものではないな」

「頭の痛い問題は、船を降りても残ってるけどなぁ」

「お前たちは、まだ進路について、さほど真剣に悩む時期じゃないだろう?」

「いや、進路じゃなくて」

「家に届いてるであろう、青い封筒のことだ」

「あぁ、そうか。言い訳を考えておかないとな。俺は、寺内のほうの数学だけだが、お前たちは?」

「古典と英作文の二つ。孝志兄ちゃんは?」

「俺は、理科と地歴が全滅で、残りも、体育以外は低空飛行」

「共産主義者が三人か。さすがに、マズイな」

「久し振りに、雷が落ちるかもしれない」

「雲行きが怪しすぎる」

「面倒な客が来てて、機嫌が悪くなきゃ良いんだけどなぁ」


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