#057「無所属者」
舞台は、寮の自室。
登場人物は、山崎、吉原の二人。
「奉仕活動は終わったか?」
「中庭の雑草は、紫陽花の周りだけ、綺麗に無くなったよ」
「そうか。担当は、武藤だったんだよな?」
「そうだよ。クドクド文句を言われながらだったから、必要以上に草臥れた」
「それは災難だったな。俺は、反省文だけで解放されたから」
「堀先生だっけ? 良いなぁ」
「人間、誰でも間違いを犯すことはある。大切なのは、同じ間違いを繰り返さないことなんだとさ。何て書いたら良いか悩んでたら、テンプレートを教えてくれたし」
「それじゃあ、全然指導になってないよ」
「まぁな。でも早い話が、また硝子を割らなきゃいいって話だろう?」
「まぁ、要点だけ言えば、そういう話になるね」
「俺も、二度も同じことを繰り返すほどは、馬鹿じゃない。――おかえり、渡部」
「ただいま。何の話ですか?」
「おかえり、渡部くん」
「硝子割った件で、吉原が、武藤に中庭の雑草を抜かされた話だ」
「強制ボランティアですね。あっ、こう言うと、語義に矛盾がありますね」
「言わんとしないことには、間違いはないけどね」
「拒否権がないもんな。それは?」
「チョコレートです。召し上がりますか?」
「いつかみたいに、お酒が入ってないよね?」
「あれは、食べられなかったもんな。思わず、吐いてしまったし」
「ごめんなさいね。リキュールが入ってるとは聞いてなかったんです」
「でも、そのあとに渡部くん、平気な顔して食べてたよね?」
「それで、顔を赤らめるでもないんだから、凄かったよな。炭酸飲料は駄目なのに、洋酒は平気なんだな」
「遺伝でしょうね。両親は、どちらもウワバミですから。――普通のチョコレートのようです。どうぞ」
「飲み過ぎないようにね。――いただきます」
「俺も、一つもらうぜ」
「どうぞ。――それで、森先生の話なんですけど」
「森先生に呼ばれてたんだったね」
「どういう用事だったんだ?」
「入るか入らないかは別として、部活を見学してみませんか、という提案でした。これが、そのリストです」
「こんなに部活があるんだね」
「この三角は何だ?」
「それは、部員がゼロ名の部活です。一応、担当教員は決まっているそうですが、休部状態なのだそうです」
「それを除くと、文芸部、天文部、美術部、園芸部、書道部」
「吹奏楽部、演劇部、放送部、将棋部、山岳部」
「全部で十部ですね」
「あれ? 文化部だけなんだな」
「二年生のこの時期から始めるとなると、運動部は難しいと思われたんじゃないかなぁ」
「おそらく、そんなところでしょうね。それで、あいにく、断り切れなかったので、明日から三人で見て回るということで、話がまとまったのですが……」
「そんな、申し訳無さそうな顔するなよ。見学すれば良いんだろう?」
「見るだけで済むとは思えないけど、見に行かないと面倒なことになりそうだから、一緒に行くよ」
「それを聞いて、安心しました。そろそろ、夕食の時間ですね」
「それじゃあ、食堂に移動しよう」




