#055「冷凍醍醐」
舞台は、渡部家。
登場人物は、渡部、清美、愛実の三人。
「ヨーグルトを冷凍させる、シャーベットみたいで美味しいわね」
「しかも、普通のアイスよりカロリーを抑えられるのよね、お姉ちゃん」
「クリーム系のアイスに比べると、半分から三分の一程度のカロリーなのよね。でも、愛実。食べ過ぎて、頭痛や腹痛を起こさないようにしなさいよ」
「言われなくても、分かってる。あっ、お兄ちゃん」
「誰だったの?」
「教材のセールスです。滔々と捲くし立てられたので、辟易しています。立て板に水の説明では、真剣味や優しさに欠けて聞こえますね」
「でも、つっかえつっかえだと、イライラするわ」
「ちょっとした言い間違いは、時に耳目を集めるものよね。滑舌が悪いのは困るけど」
「どこかに、健気で応援したくなる要素がありますよね。饒舌では、愚直さには欠けて映ります」
「ねぇ。お兄ちゃんも、アイス食べたら?」
「冷凍室に、ヨーグルトを凍らせてあるの」
「今年はヨーグルトですか。昨年は、色んなフルーツを凍らせてみましたよね?」
「苺とか、葡萄とか、キウイとか」
「バナナとか、パイナップルとかね。水分が多いと、綺麗に凍るのよね」
「でも、メロンと西瓜は冷蔵だけでしたね。――これですね?」
「そう、それ」
「試す前に、誰かさんが残らず平らげちゃったんだもの」
「そういえば、そうでしたね」
「再来週には、帰ってくるのよね?」
「電話では、そう言ってたけど、どうなるものか」
「予定通りならば父の日に間に合いますけど、ひょっとしたら、延期になるかもしれませんね」
「……雨、止まないね」
「外の音が聞こえませんね。水の防音性の高さが実感されます」
「雨から連想するのが防音性とはね。スパイ小説の読みすぎよ、博巳」
「蛇口から水を流して、盗聴を防ぐのね?」
「そんなことばっかり覚えて、一体どうするのよ?」
「役に立つかもしれませんよ? 予想外の場面で」




