#052「感情表現」
舞台は、中庭。
登場人物は、山崎、吉原、渡部、三好の四人。
「今日は、朝にサクランボが出たな」
「ちょっと酸っぱかったよね」
「熟し切ってませんでしたよね。六月が旬のフルーツではあるんですけど」
「六月に旬の果物っていうと、他に何があったかなぁ」
「枇杷や夏みかんは、今が旬だよ」
「梅とメロンも、そろそろ旬ですね。でも野菜や魚は、今が旬の物が少ないので、全体に高いんですよね」
「キャベツの値上がりには、頭が痛い」
「あぁ、お好み焼きには、欠かせないね」
「家計に響きますよね。そうかと言って、買わない訳にはいきませんし」
「渡部が言うと、あんまり困ってるようには聞こえないな」
「淡々としてるよね」
「困ってますし、内心では怒ってますよ」
「そうは見えないんだよなぁ。渡部の場合、もっと感情を表に出しても良いと思うぜ?」
「喜怒哀楽。どれを採っても、表現が慎ましいよね」
「これで結構、感情が顕になっていると思うのですが」
「どの辺が? もっと、こう、大口開けて笑うとか、拳を振り上げて怒るとかさぁ」
「ちょっと笑ってみてよ」
「いきなり笑ってみてと言われると、かえって笑えませんよ」
「無理矢理に笑かしてやろうか。それっ」
「笑いのツボは、そこじゃないみたいだね。こっちは、どうだろう?」
「フフッ。フフフ」
「笑うのは、笑うんだが」
「どうもイメージ像と違うね」
「他人を笑わせておいて、あんまりです」




