#051「鳥籠飼育」
舞台は、波止場。
登場人物は、山崎、吉原、渡部の三人。
「かもめーの、水兵さん」
「並んーだ、水兵さん」
「しーろい帽子、しーろいシャッツ、しーろい服」
「あれ、三番目は靴じゃないのか?」
「服だよ。鴎の足は白くないもの」
「嘴と同じで、赤い足をしてますよね」
「赤かったか? 黄色っぽい印象があるんだが」
「渡部くんが言ってるのは、ユリカモメのことだと思うよ。海辺にいる、小さい鴎なんじゃない?」
「そうです。嘴と足が黄色いのがウミネコ、赤いのがユリカモメだと教わったんです」
「砂浜に西瓜と浮き輪とビーチ・パラソル。空には入道雲と鴎。夏を表すイラストの定番だな」
「梅雨に、紫陽花と蝸牛、傘と長靴とレイン・コートのイラストが多用されるのと同じだね」
「紫陽花は、土壌の酸性が強いと青い花を、アルカリ性が強いと赤い花を咲かせるって言いますよね」
「理科の実験で使う、赤と青の紙と一緒だな」
「リトマス試験紙だとしたら、逆だよ。酸性だと青い試験紙が赤くなって、アルカリ性だと赤い試験紙が青くなるんだから」
「ピー・エイチ試験紙にしても、ビー・ティー・ビー溶液にしても、アルカリ性は青ですからねぇ」
「アルカリ性で赤くなるものは無かったか?」
「フェノールフタレイン溶液のことだね」
「ちゃんと名前を覚えてくださいね、山崎さん」
「テストに出そうになったらな。期末考査が終われば、夏休みで、それがが終われば、高校生活も折り返しなんだな」
「慣れてきたと思ったら、もうすぐ復路になるんだね」
「出来ることなら、二十歳ぐらいまでは、高校生を続けたいですね」
「俺も、渡部に賛成。でも、授業やテストが無ければの話だ」
「山崎くんは、ただ遊びたいだけなんじゃないの?」
「授業とテストは、学校生活に不可欠ですからね」
「あれをしろ、これをするな。何かと拘束が多いもんだな」
「集う人間が多くなって、人間同士の距離が近くなるほど、自由度が低くなる傾向にあるよね」
「でも、大勢が一ヶ所で好き勝手し出したら、収拾がつかなくなりますから、ある程度の制限は必要になりますよ」
「必要以上に拘束されてると感じるけどなぁ」
「集団の決まりは、その構成員が決めたものだけではないものね」
「壁に囲われてるような感じでしょうか?」
「俺の感覚としては、壁というよりは、籠だな。――船が着いたみたいだ。またな」
「またね」
「また明日、お会いしましょう」




