#049「黄昏逢魔」
舞台は、洋館。
登場人物は、山崎、吉原、渡部、メアリー、ルドルフ、レベッカの六人。
「ここまでに起こった出来事を、三人で共有しておきましょう」
「まず、俺から話すぜ。夕方、寮へ戻ろうとした俺は、何か妙な気配を感じたものだから、その方向に誰かいないか気になって、気配のするほうへ向かった」
「山崎くんが裏手へ回っていくところが見えたから、追いかけて行ったら、角を曲がった先のどこにも山崎くんが居なかった。これは変だと思って、先に部屋に戻ってるはずの渡部くんを呼びに行った」
「吉原さんに呼ばれた私は、一緒に裏手を探しました。すると、前に調べたトマソンが、どうも怪しいと思えてきたので、もう一度、調べていたら」
「俺と同じように、いつの間にか森の茂み中に迷い込んでしまったんだよな?」
「山崎くんが見付かって一安心したんだけど」
「ここがどこかは、分からないままなんですよね」
「それでも、よくよく見渡すと、建物の赤い屋根らしきものが見えた」
「何か手掛かりが得られるかもしれないと思って、近付いて行くことにした」
「そして無事に、このバロック調の優美な館に辿り着きました」
「入り口でもたついていたら、時代掛かった服装の女の人が出てきた」
「こちらが何も言う前に、この応接間らしき部屋に案内されて」
「今に至る訳ですよね」
「謎だな」
「何ひとつ、手掛かりがないね」
「そうでしょうか? あの女性の名前がメアリーだということは、はっきりしていますよ?」
「メアリーと呼べって言ってるだけなんだろう? それが本名かどうかも、定かではないぜ?」
「山崎くんの言う通りだよ、渡部くん」
『失礼致します。お茶とお菓子をお持ち致しました』
「何て言ったんだ?」
「やっぱり、英語のようで、英語ではない言葉だね」
「どうも、二人には通じないんですね。お茶とお菓子をどうぞって言ってます」
「俺たちは、道に迷っただけなんだから」
「すぐに帰りますって伝えて」
『お気遣いいただかなくても、すぐにお暇しますので』
『そう、おっしゃいますが、じきに暗くなりますし、夜の森の中を歩くのは危のうございます』
『まったく、その通りだ。……あぁ、これは失礼。この館の主のルドルフだ。よろしく。こっちは、妻のレベッカ』
『ごきげんよう』
『こちらこそ、よろしくお願いします』
『ねぇ、ルドルフさん。今晩、泊まって頂いたら?』
『そうだな、レベッカ。遠慮は要らない。一晩、休んでいきなさい』
『有り難い提案です。二人にも、聞いてみます』
「そっちの二人は誰なんだ?」
「何て言ってるの?」
「手前の男性が、この館の主でルドルフさん。奥の女性が、ルドルフさんの奥さんで、レベッカさん。日が暮れた森をうろつくのは危険だから、今夜はここに泊まりなさいって」
「たしかに、このまま策もないのに出て行くのは無茶だな」
「状況が把握できるまで、無闇に動かないほうが良いね。ここは、言う通りにしておこうよ」
「そう伝えますね」
『どうするのかね?』
『お言葉に甘えることに致します』
『それは良かったわ。メアリー。お部屋に案内なさい』
『どうぞ、こちらへ』
「メアリーさんが、泊まる部屋に案内するそうですよ」
「どんな部屋が待っているのやら」
「嬉しそうだね。僕は、不安でいっぱいなのに」
「なるようにしかなりませんよ。楽しみましょう」




