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#004「相互理解」

舞台は、寮の自室。

登場人物は、吉原、渡部の二人。

「たしか、渡部の父ちゃんは、海外に行くことが多いんだよね?」

「そうです。今は、ミュンヘンに居ます」

「やっぱり、日本と海外では、勝手が違うものなの?」

「文化や習慣の違いは大きいですね。最近は、日本にも国際化の波が押し寄せているように言われてますけど、父に言わせれば、まだまだ世界との壁は厚いようです」

「たとえば、何が違うの?」

「苦労は美徳である、という考えを押し付けることとか、娯楽は悪である、という極論とか、空気を読む、という暗黙の了解とかですね」

「しなくて済む苦労をさせたり、好きに遊ばせなかったり、変に気を遣ったりってこと?」

「そうです。男の子だから、女の子だから、と安易な決め付けるのも、睡眠不足や多忙さを自慢する男子や、明らかに可愛くないものでも、かわいいと連呼する女子は、外国人の目には奇妙に映るそうです」

「最近は、男子と女子とを、明確に線引きしないようになってきてるけどな」

「それでも、なぜ男性側の条件に女性を合わせようとするのだろうかと、疑問に思っていることは多いようです」

「たしかに、女性に合わせて条件を緩和しよう、改良しよう、という動きにはならないね。何でなんだろう?」

「自分たちと同じ苦労を味わわせたいからでしょうね」

「不必要なのに?」

「本当に、嫌になりますね。他にも、個性が大事と言う割には、実際に個性を発揮すると白い目で見たり、みんながやっているから、私もやって良いという理屈を捏ねたりして、個人を軽視して集団を尊重するのも、海外では納得されないそうです」

「日本の映画や小説が、なかなか海外で評価されないのも、共感できないからなのかなぁ」

「そうかもしれませんね。真面目な生徒よりも、更生した元不良のほうが偉いという風潮も、馴染みがないそうです」

「努力してきた年数で考えれば、真面目な生徒のほうが長いのにね」

「正直者が報われませんね。それにしても、山崎さんの戻りが遅いですね」

「すぐに戻ってくると思ったんだけどねぇ。まぁ、赤点だったから、しょうがないか」

「赤点を取らないように、生徒の理解力に応じた授業をするのが、教師の仕事だと思いますよ。テストで高得点を取れないのは、教えかたにも問題があると反省すべきではありませんか?」

「授業中に寝る生徒が悪いよ」

「退屈な授業しか出来ない教師にも、問題があります」

「平行線だね」

「妥協点は無さそうですね」

「そりゃあ、そうだよ。どこまで延長しても、交点がないもの」


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