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#047「少年精神」

舞台は、保健室。

登場人物は、堀、森の二人。

「寒暖差と気圧の変化、それから、過労が原因かなぁ」

「体調管理を怠るなんて、教師失格だわ」

「誰しも、いつも完璧には出来ないものだよ。教師だって、生身の人間だもの。頭痛の一つもするさ」

「そうやって、安易に自分を甘やかすのは、よくないことだと思います」

「いつも妥協してばっかりだったらね。でも、森先生が頑張ってるのは、僕も、生徒たちも、よく知ってるよ」

「でも、やる気が空回りしてばかりで、全然、役に立っていないと思います」

「それが謙遜のつもりなら、その考えは止めたほうが良いね」

「どうしてですか? 至らないのは、明白な事実です」

「だって、森先生のおかげで助かった人が、その言葉を聞いたら、すっごく悲しむよね? その人が森先生を慕ってる気持ちを萎えさせてしまって、本当に良いのかなぁ」

「それは……」

「時には義務感を脇に置いて、羽を伸ばすことも必要だよ。森先生と百合子ちゃんを使い分けないとね。年中無休で森先生を演じてると、百合子ちゃんが窒息しちゃうよ?」

「でも、義務を放棄するなんて、無責任ではありませんか?」

「責任感が強いのは良いことなんだけど、それに縛られてしまってはいけないよ」

「大人として、自分を律することができない人間に、生徒を教え導く資格はないと思います」

「そうかなぁ。僕が高校生だったとしたら、何でも完璧にこなす先生より、所々隙がある先生のほうが、人間味が有って惹かれるけどなぁ」

「それは、堀先生個人の好みでしょう?」

「へへッ。この場合、堀先生というより、康一郎くんだね。でも、僕の好みは、生徒の好みに近いんだ」

「失礼ですが、堀先生は、おいくつですか?」

「フフッ。いくつに見える?」

「少なくとも、わたしよりは年上かと」

「それは、正解。でも、真鍋司書よりは年下だよ」

「それなら、三十代ですね。いいお年なんですから、もっと大人になってはいかがでしょう?」

「先生のクラスの渡部くんにも、大人として自信を持つように言われたんだ。でも、これが僕だから、変えたくないんだ。自分が自分で無くなってしまうと嫌だから」

「嫌だからって。まるで子供ですね」

「図体が大きくなっても、中身は変わらないものさ。大人なら、これはこうしないといけないと思い込んでることを、こうしたほうが良いに越したことはない、くらいに捉え直してごらんよ。そうしたら、頭痛が和らぐんじゃないかなぁ」

「善処します。それでは、わたしは職員室に戻ります」

「お大事に」

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