#046「四百字詰」
舞台は、図書室。
登場人物は、山崎、吉原、渡部、真鍋の四人。
「上半期は、前年の十二月から、その年の五月で」
「下半期は、その年の六月から十一月に発表された作品です」
「最終候補は、上半期が七月、下半期が翌年の一月に発表される、と」
「受賞に当たって、何かと話題になるよな」
「受賞作品の内容や、受賞者のひととなりにスポットが当たりますよね」
「小説家って、風変わり人が多いよね」
「どこか、ずれてるよな」
「溢れる才能を、原稿用紙に開花させた訳です」
「小説家に限らず、創作活動をしている芸術家は、社会の一般常識から一歩はみ出した存在だよね」
「その、溢れて、はみ出した才能の結晶について、考察をしないといけないんだよなぁ」
「読むだけなら気楽なんですけど、感じたこと、思ったことを、文章にまとめないといけませんからねぇ」
「割り当て課題図書が、どれも読みやすいのが、唯一の救いだね」
「あまり本を読まない俺でも、何とか読み通せたからな。でも、考察しろって言われても、どうすれば良いのやら」
「段階を踏んでいきましょう。疑問点は、すぐに思い浮かぶでしょう?」
「まぁね。あとから登ってくる集団に向かって、無慈悲に叫ばなかったら、糸は切れなかったのか?」
「下人は、老婆の身包みを持って、どこへ行ってしまったのか?」
「コンプレックスを克服できたのに、どうして元通りになりたかったのか?」
「絵を描かずに、火の中へ助けに飛び込めば、救い出せたのか?」
「せっかく望みが叶ったのに、どうして素直に喜べないのか?」
「精神病患者の物語を、妄想として一蹴してしまって、本当に良いものか?」
「純文学の薫りがするのは、ここかしら?」
「真鍋司書」
「三冊とも同じ著者ね。来週には、この著者の名前が冠された純文学賞が欲しくて、選考委員に手紙を出した人物の文学忌があるんだけど、ご存知?」
「渡部くん、知ってる?」
「有名ですよ。ヒントは、これです」
「歯が痛い?」
「違うよ、山崎くん。便覧に、同じポーズの写真が載ってるよ」
「見覚え無いかしら?」
「三人して勿体つけないで、答えを教えてくれ」




