#045「青焼写真」
舞台は、波止場。
登場人物は、山崎、吉原、渡部、武藤の四人。
「中心点から放射状に伸びる七本の幹線と、それらを繋ぐ二つの環状線」
「環状線を外回りと内回りで一方通行として、幹線は双方向性とすると、数学の理論上は、最も効率が良いらしいんだけど」
「所詮は、絵に描いた餅だな」
「机上の空論ですね。都市計画通りには、土地開発が進みませんし」
「場所によって、利用者数に大きくバラつきがあるから」
「いつも空いてるところと、いつも混んでるところができてしまう」
「電車やバスといった公共交通機関でも、同じことが言えますね」
「居住や職業の自由を制限しない限り、改善は難しいだろうね」
「無責任に好き勝手にしてきたシワ寄せが、ここにきて一気に押し寄せてきた訳だな」
「その一方で、都会に若者が流れた影響で、急速に高齢化が進み、集落としての機能を維持できなくなっている地域があるんですよね」
「都市は、人間が増えすぎて問題となって」
「地方は、人間が減りすぎて問題となるんだな」
「どの程度の人口密度であれば、快適な生活を送れるのでしょうね」
「どういう生活が快適だと思うかは、人によって違うから、単純な数値化は、不可能だと思うよ」
「傍に誰かがいないと、すぐに不安になる人間も居れば」
「少しでも他人が居る気配を感じただけで、すぐに不快に思う人間も居ますね」
「それにしても、なかなか船が来ないね」
「雨風が強いからな。窓がガタガタ揺れてる」
「関西方面に、中国方面に、四国方面。三方面とも遅れるとは珍しいですね」
「いつもなら、どれか一方面は来るのにね」
「よほど海が荒れてるんだな」
「天候不順は、人間の力では、どうしようもありませんものね」
「天気を自在に操ることは、誰にもできない」
「操っていると思ったら、操られていただけだったりしてな。このまま全便欠航になると、延期になるんだったか?」
「そうです。来週に持ち越しになります」
「まぁ、無理に帰る必要はないから、来週になっても良いけどね」
「俺も、来週になっても平気だ」
「私もです。あっ、武藤寮監ですよ」
「このような事態は滅多にないのだが、全便の欠航が決定したので、全員、速やかに寮に戻るように」
「よし、帰ろう」
「この雨の中を帰るのかぁ」
「ずっとここにいる訳にもいきませんよ?」
「置いていくぞ?」
「帰らないとは、一言も言ってないよ」
「フフッ。三人一緒の週末は、初めてですね」




