#031「英米文学」
舞台は、図書館周辺。
登場人物は、山崎、吉原、渡部、辺野古、真鍋の五人。
「英語の例文って、日本語としておかしい時が多いよな」
「いつ、どこで使うのか、疑問を挟まずにいられない会話文とか」
「情景を想像すると、あまりにもシュールすぎる説明文とかですね」
「例えば、これだな。メアリーに傘を貸さなければ、トムが風邪を引くことはなかっただろう」
「散々だね、トム」
「これは、どうでしょう。ボブがキャサリンをプロムのダンス相手に誘ったときには、キャサリンはフレッドに誘われたあとだった」
「一足遅かったな、ボブ」
「こういうのも、あるよ。メグとべスが焼いたクッキーは失敗作だったが、ジョーは気付かずに、ローリーに渡した」
「このあとローリーは、クッキーを食べたのでしょうか?」
「そうだとしたら、ジョーは災難だな」
「……メグ、べス、ジョー、ローリー。どこかで聞いたことがある名前だなぁ」
「そこの、三人組」
「あっ、用務員のおっちゃん」
「こんにちは、辺野古さん」
「僕たちに、何か用ですか?」
「新しい本棚が出来たから、図書館に運びたいんだ。手伝ってくれないか?」
「いいよ」
「いいですよ」
「お安い御用です」
「この通り、二つあるんだ。二人で一つ持てば良いだろう」
「棚が多いな」
「それに、奥行きが浅いですね。文庫用ですか?」
「左様。文庫本の蔵書数が増えたので、一ヶ所にまとめることになってな。誰か、反対側を持ってくれ」
「僕が持ちます」
「もう一つは、俺たちで持つか」
「そうしましょう」
「それにしても、君たちは感心な生徒だね。校則や寮則を破って、非行に走る不良も居るというのに」
「同じ学校の生徒でも、人によりますから」
「不良には不良の、特別な事情があるのかもしれないし」
「校則や寮則そのものに、制度上の欠陥がないとも言えません」
「個人が原因か、組織が原因か、よくよく見極めなければ、誤った対策で、被害が拡大してしまうからな」
「辺野古さん。もう、出来たんですか?」
「まだ、早かったかな?」
「えぇ。選別は途中なの。でも、良いわ。先に棚だけ置いてしまいましょう」
「それじゃあ、置いていくよ」
「失礼します」
「こんにちは、真鍋司書」
「あら、三人も手伝ってたのね」
「通りすがりを呼び止めたんだがね。感心だろう?」
「ここで良いの?」
「そこで良いわ。ありがとう」
「……真鍋司書。つかぬ事を伺いますけど、メグ、べス、ジョー、ローリーと聞いて、何を連想しますか?」
「そうねぇ。若草物語かしら」
「それです」




