#030「優先順位」
舞台は、教室。
登場人物は、山崎、吉原、渡部の三人。
「壮観ですね」
「すごいだろう?」
「おはよう、って、何やってるのさ」
「山崎さんが、日常に小さなサプライズを、とおっしゃるものですから」
「驚いたか?」
「呆れたよ。あれ。引き抜けない」
「一ページずつ、互い違いに重なってますからね」
「結構、大変だったんだぜ?」
「その努力を、もっと有益なことに向けて欲しいね。元に戻すのには時間が掛かりそうだから、あとで直すことにしよう」
「それでは、答え合わせを始めますね」
「今回の問題は、解けた自信がある」
「前回の復習だもの。解けて当たり前だよ。あれ? ここにノートとペンケースを置いてたんだけど、知らない?」
「これですか?」
「それだよ。何で渡部くんが持ってるの?」
「教科書ミルフィーユの邪魔だったから、預けた」
「あのねぇ」
「まぁまぁ。問一の解は、どうなりましたか?」
「エックスが三分の十七以上、六文の四十三以下で、ワイが、九分の十七以上、三十六分の四十三以下」
「あれ? ワイの範囲が微妙に違う」
「エックスは合ってるみたいですね。どこで間違えたのでしょう?」
「ここだよ。ワイの式が、こっち、の、わっ」
「ナイス、リアクション」
「第二サプライズ、成功ですね」
「三色ボールペンのインクを入れ替えるとは。青が黒で、黒が赤か」
「エックスを代入する式が、間違ってたのか」
「よくある、ケアレス・ミスですね」
「暗算は早いのに、こういうところが不注意なんだよね」
「読み書き算盤ができれば、小商いができるんだ。なまじっかな学があると、判断力や行動力が鈍るんだぜ?」
「何かを学ぶには、人間の生涯は、あまりにも短いものです」
「他に解が存在しないというのも一つの解、という話もあったね」
「国連加盟国のうち、や行から始まる国はいくつあるかって話だよな?」
「百九十三ヵ国のうち、ヨルダンだけなんですよね」
「他にも、ありそうなものなのにね。でも、解が分からないのと、存在しないのとは百八十度違うんだよ」
「やればできるって言うだけの人間と、実際にやってできた人間とのあいだには、大きな差があるのと同じだな」
「あらゆることを知っていても、何ひとつ体験したことない人は、説得力がありませんものね」
「話を戻すよ。この公式は、あぁ、そうか。教科書が使えないんだった」




