#029「先進後発」
舞台は、図書室。
登場人物は、山崎、吉原、真鍋の三人。
「刑事って、煙草やドーナッツが好きなのか?」
「違うよ。店舗が通りに面しているから、通行人を良く知っているだろうと踏んで、聞き込みをしてるだけだよ。煙草やドーナッツを買っていくのは、その情報料ってこと」
「あんパンとコーヒー牛乳で張り込みをするのは?」
「手早く、空腹を満たしたいからだろうね。あと、眠気を飛ばしたいのもあるのかもしれない」
「悪役が、高級車や、ブランド品を身につけてるのは?」
「ドラマの場合は宣伝もあるだろうけど、大きいのは、いざとなったら高飛びの費用にするためだろうね」
「そういう、暗黙の掟が分かると、観るのが楽しくなるな」
「少し齧った程度ならね。知りすぎると、展開が読めてしまうから、面白くなくなるよ」
「そうなると、知ってるだろうということを前提に、わざと違う展開に持っていかなきゃ、面白がられなくなる訳だ」
「だけど、あんまりマニアックな人たちに照準を合わせていると、初めて見る人が、ついて行けなくなるんだよねぇ」
「難しいもんだな」
「誰にでも出来ることなら、才能や努力は必要ないよ」
「それも、そうだ」
「あら。今日は二人だけなのね」
「あぁ、真鍋司書」
「今回は二人一組だから、渡部は別の人と組むことになったんだ」
「何の授業かしら。現代文?」
「違います。政治経済です」
「日常でありそうな出来事を題材にして、簡単なミニ・ドラマをつくらないといけなくて」
「へぇ。面白そうね」
「渡部くんがいれば、パッと糸口を見つけてくれるんですけど」
「二人して凡才だから、困ってるんだ」
「閃きが欲しいのね? だったら、参考になりそうな本があるわ。でも、一つだけ気になることがあるの。……この本なんだけど」
「『アイデアのアトリエ』。創作の工夫が満載ですね」
「良さそうな本だな。何が気がかりなんだ?」
「見返しにあるカードを見れば、分かるわ」
「誰が借りたんだろう。あぁ、そういうことか」
「こういう便利な本があるなら、教えてくれても良いものなのに。渡部の野郎め」




