#022「調理材料」
舞台は、寮の食堂。
登場人物は、山崎、吉原、渡部、三好、武藤の五人。
「ゼリーの素、ホットケーキの素」
「レトルト食品、冷凍食品、即席食品」
「缶詰、瓶詰め、パック詰め」
「日本の食料品店は、半製品が豊富にですよね」
「すぐ、簡単に食べられるから、手軽で便利だよな」
「混ぜて焼くだけ、温めるだけ、封を切るだけでは、料理とは言えない気がするけど?」
「どこまでが材料で、どこからが調理か、境界線が曖昧だよねぇ」
「あぁ、三好さん。この煮物、甘辛くて美味しいです」
「この唐揚げ、最高」
「こっちの、鮭の塩加減も」
「まぁ、ありがとう」
「どこか優しい、家庭の味ですよね」
「真心がこもってるよな」
「温かみを感じるよね」
「最近は、家庭の味より、お店の味のほうが美味しいと感じる子が多くて、戸惑いを覚えてたんだけど」
「家庭で、お店の味を再現する料理番組は、多いですよね」
「プロの味なら、美味しいに決まってるっていう思い込みだな」
「味覚の好みは、人によりけりなのにね」
「ブランドや、宣伝効果に惑わされず、自分の舌で確かめて欲しいわね」
「評判の割には味が今ひとつ、というお店も、少なくないですよね」
「あまり評判にはなってないけど、すごく美味しい店もあるぜ?」
「どこかのお好み焼き屋と同じだね」
「吉原。それは、当て擦りか?」
「心当たりでも?」
「何ぃ」
「こら、こら。喧嘩なら、食べ終わってからにしてちょうだい」
「お行儀が悪いですよ、二人とも」
「すまない。つい、カッとなった」
「僕も、少し言い過ぎたよ」
「おばちゃん。ビー定食、一つ」
「はい、ただいま」
「……武藤寮監ですね」
「さっさと食べて、部屋に戻ろう」
「他人のふり、他人のふり」




