#021「四季折々」
舞台は、実験室。
登場人物は、山崎、吉原、渡部、森の四人。
「タン、タンタンタンタカ、ターン。タカ、タンタンタンタカ、ターン」
「タカ、タータカタッタ、タッタッタ」
「ヴィヴァルディーの『四季』ですね」
「掃除の時間は、いつもクラシックだよな」
「季節によって、曲が違うけどね」
「どれも『四季』には違いありませんけどね。今、流れているのは『春』ですね」
「六月になったら『夏』、九月になったら『秋』、十二月になったら『冬』」
「安直な決め方だよね」
「四曲とも再生時間が十分前後ですから、ちょうど良いのでしょうね」
「曲が終わったら、あと五分で掃除が終わりって寸法だな」
「ここから見える中庭の花も、季節によって変わるよね」
「春は、スイートピー、すずらん、チューリップ、バラ、フリージア。夏は、あさがお、ジャスミン、あじさい、ハイビスカス、ひまわり。秋は、ダリア、ききょう、コスモス、ぶどう、キンモクセイ。冬は、カトレア、シクラメン、スイセン、スノードロップ、ヒヤシンスが見頃ですね」
「詳しいな、渡部」
「何度か調べたのに、覚えてないの?」
「関心が薄いと、記憶に残りませんからねぇ」
「綺麗だとは思うが、一つ一つ観察したいと思うほど、花に興味は湧かない」
「昆虫には興味があるのにね」
「蝉を捕まえるのは結構ですけど、お部屋に持ち込まないでくださいね」
「あの時は、悪かったよ。だけど、殺虫剤をまくとは思わなかったな」
「僕が止めなかったら、部屋中に散布してたよね」
「手に取るな。やはり野に置け、蓮華草、です」
「どういう意味だ?」
「昆虫には昆虫の、人間には人間の、どんな物にも、その物に相応しい場所があるってことだよ」
「私だって、いくらお花がすきでも、中庭のお花を摘んで、お部屋に飾ることはしませんから」
「そうだな。摘んだり、捕まえたりするために、育ててる訳じゃないもんな」
「そうだよ。集合から切り離したら、バランスが崩れる」
「実験室の掃除は終わったの?」
「あっ、森先生」
「いつの間にか、音楽が終わってるな」
「つい、話に夢中になってしまったね」
「ちゃんと掃除してくれないと困るわ」
「ごめんなさい」
「すぐ、終わらせます」
「早いところ、椅子を戻さないとね」




