#020「桃色花束」
舞台は、渡部家。
登場人物は、渡部、清美、愛実の三人。
「お兄ちゃん。輪飾りの飾り付け、終わったよ」
「たくさん作ったんですね。こちらも、デザートの用意ができました。オードブルの用意はできましたか?」
「バッチリよ、博巳」
「それじゃあ、一階のエントランスまで、お母さんを呼んでくるね」
「行ってらっしゃい」
「急がなくて良いからね」
「分かった」
「それでは、クラッカーを持って待機しましょうか、お姉さん」
「そうね。ところで、博巳。デザートは何を作ったの?」
「時間を掛けられませんから、カットしたイチゴとキウイ・フルーツと、缶詰の果物で、フルーツポンチにしました。オードブルのほうは?」
「カナッペと、スライスしたサーモンと、チーズ。あと、彩りにサラダを用意したわ。メイン・ディッシュは、どうするの?」
「鳥のささ身を買ってありますから、大葉と梅肉を挟んで焼いていこうかと」
「美味しそうね。ねぇ。一週間遅れになったけど、良いわよね?」
「仕方ありませんよ。先週末は、大型連休の直後で、バタバタしてましたから」
「お父さんも、帰ってくるならくるで、連絡しておいてくれれば良いのに」
「驚かせたかったのではないでしょうか?」
「焦るだけよ。段取りや、心の準備ってものがあるんだから」
「すぐに、別の出張先に行ってしまいましたし」
「今度は、どこって言ってたかしら? 聞き覚えのないところだったような」
「ビリニュスですよ。リトアニアの首都です。そうそう。お花は、愛実の担当でしたよね。何を選んだのか、分かりますか?」
「チラッと見えただけだから、何の花かは分からないけど、ピンクの花だったわ」
「カーネーションにも、バラにも、ユリにも、ピンクはありますからね。オレンジは、入ってませんでしたか?」
「だから、少ししか見えなかったのよ。愛実ったら、あたしにも隠したがるんだから」
「花言葉は、感謝、愛情、優しさ、美しさ、上品、尊厳、といったところですね。母の日にはピッタリです」
「まぁ、母の日のお祝いだってことと、こちらの予算を伝えて、お花屋さんに任せるように言ったから、変な花が入ってることはないと思うわ」
「たとえ、入っていたとしても、目くじらを立てるようなことはないでしょうけど」
「逆に面白がりそうね。あっ、エレベーターが着いたわ」
「話し声がしますね。母と愛実に違いなさそうです。はい、クラッカー」
「サンキュー。それじゃあ、良いわね?」
「えぇ。準備万端です」




