#019「伝統作法」
舞台は、寮の食堂。
登場人物は、山崎と渡部の二人。
「箸を、グーで持ったら?」
「握り箸です」
「箸の持ち手側を先にして、食べ物を摘んだら?」
「逆さ箸」
「箸の先から、雫が垂れたら?」
「涙箸」
「スプーンみたいに掬ったら?」
「横箸」
「お椀や茶碗の上に置いたら?」
「渡し箸」
「食べ物に突き通したら?」
「刺し箸」
「下のほうの食べ物を、かき分けて食べたら?」
「探り箸」
「箸を持ったまま、食器を持ち上げたら?」
「持ち箸」
「箸を一本ずつ持って、食べ物を二つに割ったら?」
「千切り箸」
「ど、れ、に、し、よ、う、か、な」
「迷い箸」
「おかずから、すぐに別のおかずへ」
「移り箸」
「箸で器を手前に引いたら?」
「寄せ箸」
「箸先を舐めたら?」
「舐り箸」
「大量の食べ物を頬張ったら?」
「込み箸」
「箸先を人や物に向けるたら?」
「指し箸」
「一つの料理ばかり食べたら?」
「重ね箸」
「魚を下側の身を、骨越しに食べたら?」
「透かし箸」
「汁物を箸でかき混ぜたら?」
「回し箸」
「ご飯に箸を突き立てたら?」
「仏箸」
「箸と箸で食べ物を渡したら?」
「拾い箸」
「取り箸ではなくて、自分の箸で取り分けたら?」
「直下箸」
「食べ終わったあと、箸先を右にして置いたら?」
「調伏箸」
「食事の道具一つに、こんなにタブーがあるのも珍しいだろうな」
「そうですね。でも、マナーの本質は、それを守ることにあるのではなくて、相手を不快にさせないことにあるのではありませんか?」
「鬼の首を取ったように注意する人間とは、一緒に食事しても楽しくないもんな」




