#114「聖夜直前」
舞台は、相談室と中庭。
登場人物は、堀、森の二人。
「施設見学とショッピングが主だったから、小笠原先生は残念がってたよね」
「パウダー・スノーで滑りたかったって、お念仏のように何度も呟いてましたね」
「長野県の白馬村といえば、特別豪雪地帯。やっぱり小中学校では、スキーの授業があるんだって」
「雪国ならではですね。ところで、こんな世間話をするために、ここに呼び出したわけではありませんよね?」
「もちろん、違うよ。折り入って相談があるんだ」
「わたしでなければ、いけないことなのでしょうか?」
「他の人では駄目なんだなぁ、これが」
「それでしたら、手っ取り早くお願いしますね」
「なるべく手短に済ませたいところだけど、難しいんだ」
「複雑な用件なのでしょうか?」
「それほどでもないような、あるような」
「煮え切りませんね」
「実は、自分からこういうことを言うのは、初めてなんだ。だから、どう伝えたら良いか、よく分かんなくて」
「率直に、かつ簡潔に伝えてくだされば、それでよろしいのではないかと」
「そっか。あぁ、でも、緊張するなぁ。ねっ、もう一つだけ、世間話を挟んでも良い?」
「引き伸ばして先送りにしても、何も変わりませんよ?」
「そうなんだけど、ウゥン」
「終業式が済んだとはいえ、仕事は残ってるんです。本題に入らないのでしたら、改めて伺わせてください」
「待って。言うから。このまま、年を越したくない」
「たしかに、釈然としないまま、新年を迎えたくありませんね」
「それじゃあ、言うよ。一度しか言わないから、よく聞いてね」
「何だか、告白でもするような勢いですね」
「……もう、知らないよっ」
「えっ、ちょっと、堀先生。待ってください」
「お願いだから、一人にさせてよ」
「そうはいきませんよ。ご用件を伺うまでは、どこまでも追いかけますから」
「もう、伝える勇気は残ってないよ」
「無くても、聞かせてください」
「だって、あの場で、あぁいうことを言うってことは」
「結果として、茶化してしまったことは謝ります。でも、堀先生も」
「知らなかったんでしょう? 気付かなかったんでしょう? そのままで良いから、忘れてよ」
「わたしの話は、終わってません」
「嫌だ。聞きたくない」
「子供みたいな駄々を捏ねないでくださいよ」
「大丈夫だから。冬休み明けには、元通りだよ」
「勝手に自己完結させないでください。良いですか? わたしも、一度しか言いませんから、よく聞いてくださいね。堀先生がわたしのことを好きだということは、さっきまで、わたしは知りませんでした」
「だから、無かったことに」
「まだ続きがあります。でも、わたしが堀先生のことを好きだということも、堀先生は知りませんよね?」
「……えっ? じゃあ、付き合ってくれるの?」
「喜んで」
「やったぁ。ックシ」
「フフッ。上着も持たずに飛び出すからですよ。ほら、早く戻りましょう」
「クシュン。……これ以上に熱が上がったら、身体がもたないよ」




