#113「柚子南瓜」
舞台は、寮の自室。
登場人物は、山崎、吉原、渡部の三人。
「道内の移動は、各クラス十人前後で、五十人ずつの乗車でしたね」
「もう一台用意してくれれば、クラス別で乗れただろうに」
「引率の先生が四人だったから、仕方ないよ」
「山崎さんは、一号車でしたよね? バスの車内では何をしてたんですか?」
「森班だったからな。バス・ガイドの話と、なぞなぞ大会だったな。吉原は、二号車だったな?」
「辺野古班だったからね。よくある簡単な心理テストと、カラオケ大会だったよ」
「辺野古さんも、歌われたんでしょうか?」
「演歌とかバラードとか歌いそうだな」
「それが、平成ポップスを熱唱するものだから、驚いたんだ」
「意外ですね」
「昭和の男にしては、選曲が若いな」
「渡部くんは、三号車だったよね?」
「そうです。堀班でしたから。音威子府出身の堀先生が、函館出身のバス・ガイドさんと、道産子トークに花を咲かせてました。それで途中から、北海道カルト・クイズ大会になりました」
「オトイネップ?」
「北海道の地名だよ」
「音威子府村は、道内で最も人口が少ない地方自治体です」
「市じゃなくて、村だもんな。四号車の小笠原班は、何をしてたんだろう?」
「車内テレビで、短編映画を鑑賞してたらしいよ」
「どうも、そうらしいですね」
「それなのに、何であんなに疲れてたんだ? 座ってれば良いだけなのに」
「静かに観賞できると思う?」
「五十人もいれば、騒々しくならざるを得ませんよ」
「そういうことか。バスによって、バラバラだったんだな」
「ものの見事にね」
「そろそろ、夕食の時間ですね。食堂に移動しましょう」
「今日は冬至だから、南瓜尽くしだって、昨日、言ってたよな」
「そう言ってたね」
「あと、お風呂が柚子湯なんですよね。冷えた身体が温まります」
「北海道に比べれば、気温が高いとはいえ」
「冬が寒いことに、違いはないね」




