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#111「試練大地」

舞台は、寮の自室。

登場人物は、山崎、吉原、渡部の三人。

「えいっ」

「わっ。もぅ、何するのさ。おなかが冷えるじゃないか」

「へへっ。懐かしいだろう?」

「ここは小学校じゃないんだから、くだらない悪戯しないでよ」

「ただいま戻りました。着替え中ですか、吉原さん?」

「違うんだ。渡部は、こうやって、うしろから服を持ち上げる遊びをしなかったか?」

「擦った下敷きで髪を逆立てるのと、同じレベルだよね」

「そういえば、一時期、流行していましたね。――試験日程が貼り出されていたので、ノートして来ました」

「もう、テスト前なのか」

「考査日は、五日から九日なんだ」

「そのあとは、土日を挟んで、十二日から十四日まで修学旅行で、十五日は授業なし。二学期の終業式は二十二日で、三学期の始業式は、九日に成人の日が過ぎたあとの一月十日です」

「試験結果を見ずに、二泊三日の旅を過ごすのか」

「先生側としては、二年生の分を後回しに出来るから、採点作業が楽なんだろうけど」

「生徒サイドとしては、気掛かりですよね」

「気にすることないだろう。テストの呪縛から解放されて、そのまま羽根を伸ばせば良いじゃないか。それに、終わったら旅行だと思うと、やる気も違ってくる」

「珍しく試験に前向きだね」

「その先に楽しいことが待っているとなると、こうも違うものなのですね」

「北海道には、一度で良いから、行ってみたいと思ってたんだ」

「僕も行ったこと無いけど、冬の北海道は、相当、寒いらしいね」

「私も、夏の富良野にしか行ったことがなくて。真冬日になる日も、向こうでは珍しくありませんからね。――話を期末考査に戻しますね」

「五日とも、一日に三科目あるのか」

「いつになく厳しい日程だね」

「ハード・スケジュールですね」

「でも、今回の俺は、いつもと一味違うからな。まず、何をすれば良いんだ?」

「毎回、時間が掛かるのは、英語と数学だよね」

「用語や解答例の丸暗記という訳にはいきませんからね」

「どっちも、出題者が意地悪だからなぁ」

「解く上で核になる部分を掴めれば、好成績を修められるんだけど」

「本質を理解しないまま臨んでしまうと、悲惨な結果になりますからね」

「俺だって、赤点は免れたいんだ。頼むよ」

「他力本願だね。たまには、一人でやって欲しいよ」

「まぁまぁ。山崎さんに教えることで、盲点が見つかることも少なくありませんし、山崎さんを原級留置させたくはないでしょう?」

「一年のときは、危なかったからな。二度とあんな目には遭いたくない」

「二学期に気付いたから良かったものの、一歩間違えれば、取り返しが付かないことになってたよ」

「大事には至らなくて済みましたから、結果オーライですね。それでは、数列の漸化式から始めましょう」

「この、メダカの尾鰭みたいな記号は、何だ?」

「シグマだよ。前回の試験でも出てきたのに」

「もう一度、ゼロから説明し直しですね」

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