#010「黄金週間」
舞台は、教室。
登場人物は、山崎、吉原、渡部の三人。
「大型連休も終わったな」
「今年は、二日と六日を休みにすると、十連休だったからねぇ」
「土日がお休みなら、ですけどね」
「それにしても、平日の三連休は大変だった」
「店の手伝いをしてたんだったね」
「お疲れさまです」
「ここぞとばかりに、観光客や参拝客やお遍路さんが来るんだもんなぁ。参ったぜ」
「忙しそうだね」
「お兄さんや弟さんも、お疲れでしょうね」
「くたびれてるよ。まだ月曜日だっていうのにな。吉原は、どうだったんだ?」
「僕のところは、ステレオ・タイプだけど、床の間に鎧兜を飾って、庭に鯉幟を流して、粽を食べて、菖蒲湯に入ったよ」
「オーソドックスで、充実した端午の節句ですね」
「屋根よーり、たーかーい、鯉のーぼーりー、だな」
「童謡のほうの歌詞は、そうだね」
「他に歌詞がありましたか?」
「文部省唱歌のほうだろう? 甍ーの、なーみーと、雲のーなーみー、ってな」
「亡くなったお爺さんが、よく三番を歌ってたんだ」
「どんな歌詞なんですか?」
「俺もさすがに、二番や三番までは知らない」
「百瀬の滝を登りなば、忽ち竜になりぬべき、わが身に似よや男子と、空に躍るや鯉のぼり、だよ」
「登竜門の譬え話ですね。文語体には、独特のリズムがありますよね」
「戦前の手紙とか、日記とかに使われてた言葉遣いだな。何々申し候につき、何々下されたく候、って具合のな」
「美文調には、品格を感じるよね」
「言葉の響きが違いますよね」
「言葉の響きっていえば、特撮物の怪獣は、大抵、ガギグゲゴから始まるよな」
「五ギガバイトも、怪獣名になるの?」
「フフッ。ハ行やパ行は、愛らしいイメージですよね」
「柔らかい物を想像させる音だな」
「ホット・ケーキとか、プリンとかね」
「大福とか、落雁とかだと、重量感がありますからね」
「いかにも中までギッシリ詰まってるってのが、ひしひしと伝わってくるよな」
「空気感がないね」
「そうですね。それにしても、窓は開けてるのですが、暑いですね」
「この学校、いつになったら空調設備を入れてくれるんだ?」
「学費には、設備充実費が含まれてるはずなんだけどねぇ」
「今日は、風がありませんね」
「鯉のぼりでなくても、項垂れてしまうぜ」




