#108「夫婦円満」
舞台は、寮の自室。
登場人物は、山崎、吉原、渡部の二人。
「十一月二十二日は、一、一、二、二、で良い夫婦の日なんだな」
「語呂合わせだね」
「毎月二十二日は、ショート・ケーキの日でもありますよ」
「何で、そうなるんだ?」
「カレンダーを見てご覧よ」
「すぐ上に、苺が乗ってます」
「あぁ、なるほど。前の週は必ず、十五日だな」
「十二月まで確認しなくても良いのに」
「話を戻しますね。良い夫婦の日にちなんで、両親の馴れ初めを聞いて来るようにというのが、先週の課題でしたけど、うまく聴き出せましたか?」
「忙しいから後回しだって言われたけど、風呂場まで付いて行ったら、観念して話してくれたぜ」
「僕は逆に、なかなか話を切り出せなかったんだけど、何とか日曜日の朝に訊くことができたよ」
「私のところは、母が恥ずかしがって話したがらなかったので、最後は直接、父に連絡を取りました。どんな話をされましたか?」
「俺の父ちゃんは、高校で体育教師をしてて、母ちゃんは、その高校の教え子だったんだってさ。だから、十二支は一緒だけど、歳が一回り違うんだ」
「波乱の予感がするね」
「運動神経が良いのは、お父さんの遺伝ですね。でも、どうして、夫婦でお好み焼き店を経営されることになるのですか?」
「母ちゃんが高校三年生の冬に、妊娠してることが発覚したんだ。もちろん、このとき母ちゃんのおなかの中に居たのは、兄ちゃんだ。これが大事に発展して、結局、父ちゃんは辞職、母ちゃんは退学するしかなかったんだ。そんなんだから、お互い、家に居づらくなったんだけど、行く当てが無いから、さぁ困った」
「だからと言って、いきなり二人だけでは暮らしていけないよね」
「住むにしても、働くにしても、何らかの後ろ盾が必要ですからね」
「窮状を見かねた母ちゃんの叔父さんが、自分の店を手伝って、ゆくゆくは継ぐことを条件に、住み込むことを許したんだ。これが、山崎家の今に繋がる夫婦の馴れ初め」
「山崎は、お母さんの苗字なんだね」
「差し支えなければ、その大叔父さんの現在を知りたいのですが」
「夏に家に居なかったから、亡くなったと思ったか? ところが、まだ生きてるんだな、これが。あの家から少し離れたところで、その叔父さんの息子が鈑金屋をやってて、そこに楽隠居してるんだ」
「そうなんだ」
「それを聞いて、安心しました」
「俺の話は以上だ。今度は、吉原の話を聞こう」




