#106「紫色紡錘」
舞台は、渡り廊下と中庭。
登場人物は、山崎、吉原、渡部、辺野古の四人。
「ここ数日、おなかの調子が良くないのです」
「生理か、渡部?」
「デリカシーがないよ、山崎くん」
「私の身体に、卵巣や子宮はありませんよ、山崎さん」
「ありゃあ。いつになく真面目な返答だな」
「体調が悪いのに、笑ってられないよ」
「ご心配なく」
「渡部が男だってのは、充分わかってるさ。火星人の吉原と違って、立派な道具を持ってるし」
「下ネタ禁止。セク・ハラか名誉毀損で訴えるよ、山崎くん」
「最近、通じが悪いのですが、整腸剤には頼りたくないんです」
「便秘なら、浣腸という手も」
「山崎くん。何で婉曲に話してるのに、直截に言っちゃうかなぁ」
「それは最終手段として、まずは、水分と食物繊維の摂取を心掛けることで、自然と治らないものかと」
「切り札は温存しておくって訳か」
「段階を踏まないと、副作用が大きいからね」
「おぉい、そこの三人。ちょっと、こっちにおいで」
「あぁ、辺野古さん」
「何の用だろう?」
「行ってみようか。身体に障ることなら、渡部くんは断って良いからね」
「おぅ、来たな。いやぁ、庭の落ち葉で焚き火をして、畑の薩摩芋を焼いてたんだ。もう、中まで充分に火が通って食べ頃だ。ほれ、この通り」
「うわぁ、湯気が立ってる」
「ちょうど良いタイミングだね、渡部くん」
「本当ですね。美味しそうです」
「あまり数がないし、真似して火遊びされると敵わないから、くれぐれも内密にな。まだ熱いから、火傷しないように」
「焼きたては違うな」
「甘味が強いね」
「食感も、しっとりしてますね」
「電子レンジで温めれば、すぐに加熱できるし、手間も掛からないが、この味は出せないからなぁ」




