#102「男鹿半島」
舞台は、図書室。
登場人物は、渡部、真鍋の二人。
「ちょうど、日本海に突き出たところに位置する市ですね」
「数少ない、県の形の特徴よ」
「秋田美人なんですね」
「他の生徒だったら軽くあしらうところだけど、渡部くんに言われると、無下に扱えないわね」
「それにしても、訛りがありませんね」
「高校生のときに、田舎臭いのが嫌で矯正したの。秋田の方言といえば、何を思い浮かべるかしら?」
「名詞の最後に、ッコをつける。ケとクで会話が成立する。あと、一人称が男女問わずオラであるといったところですね」
「有名なのは、そのくらいね。でも、それだけじゃないのよ。捨てることを、なげる、あそこは、あっこ、いじるとか触ることを、ちょす、値段を聞くときに、なんぼ、うるさいは、やがしめって言うの。全然通じなくて困ったわ」
「でも、かわいいことを、めんけぇというのは、よく知られてますよ」
「小説やドラマの台詞で、よく使われるせいね」
「時代劇の村人役ですね」
「会津弁や津軽弁と混ぜこぜにされるのには腹が立つけど、他県民からしたら、どれも同じように聞こえるのかしら?」
「東北弁は、難解ですからねぇ。関西人が、京都と大阪と奈良とでは言葉が全然違うと主張しても、非関西圏の人間には通じないのと同じです」
「関西弁で一括りにしないでってことね。東京の人たちは、どこかで地方を見下す傾向があるものね」
「知名度は、どうしても人口に正比例してしまうんですよね」
「忠犬ハチ公が生まれたのは大館で、駅前のハチ公像がこそ本物で、渋谷にあるのはレプリカだと思ってるんだけど、認知度の点で大差があることが悔しいの」
「あっ、でも、比内鶏とか、稲庭うどんとか、あきたこまちとか、美味しいものが多いですよね」
「比内鶏と稲庭うどんは自慢だけど、何でも小町と名付ける習慣には、正直な話、うんざりしてるわ」
「たしかに、何々小町というブランド商品が目立ちますね」
「食べ物つながりで訊くけど、とんぶりは、食べたことあるかしら?」
「畑のキャビアと言われていますよね。でも、残念ながら食べたことは無いんです」
「本物のキャビアを食べたことがないから、似てるかどうかはわからないけど、乙なものよ」
「機会があれば、一度、食べてみますね」
「美味しいかどうかは好みによるから、あまり期待しないで食べるといいわ」
「フフフ。どこの特産品にも、注意が付き物ですね」




