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頭隠して尻濡れる

木と木の間、背の低い薮木に紛れるように、膝を抱えた女の子と目が合った。

「………………」

「………………」

若い、というよりは幼いという表現が合いそうなくらい体が小さい。緑っぽい髪が湿り気を帯びて輝いて見えて神秘的。可愛らしく整った相貌は、目の前で風船の割れた子犬のように目を開いたまま固まっている。なんだろう、とりあえずかわいい。

木に立て掛けるように背嚢を置き、女の子の隣の隙間に腰を下ろす。上手い具合に枝葉が傘になっているらしく、この小さな空間は完全に雨を遮っていた。一息ついたのも束の間……おしりに冷たい感触。地面に染み込んだ雨水のことまで考えていなかった。下になにか敷けばよかったな。見れば女の子も外套のようなものを敷いていた。

「………………」

「………………」

隣から困惑の気配。いやまあ、気持ちはわかるよ。見ず知らずの人間が隣に座って無言でいるんだもの。何か言えよって思うよね。でも仕方ないじゃない。君みたいな子が一人でこんな森の中にいるなんて、どう考えたって訳ありなんだもの。私もなんて言っていいか分からないんだよ。

「………………」

「………………」

「………………」

「…………ひとよけ」

おお、喋った。

「人避け、張ってる、のに、なんで、気付いた、ですか」

緊張しているのか会話に慣れていないのか、ぶつ切りの言葉で問い掛けてきた。人避けって確か、人が近寄ってこないようにする呪いとか結界とか、そういうやつだっけ。

「んー、なんとなくというか、勘というか、そんな感じで目が合ったからなぁ。私ね、かくれんぼは得意なんだよ」

「かくれんぼ」

不思議そうな声色で鸚鵡返し。なんだか妙な感じ。まさか知らない?かくれんぼを?

「隠れてる人を見つける遊びだよ。私のは遊びというより訓練に近かったけど……」

石やら枝やら水鉄砲やら延々と飛び道具が飛んでくる最中、魔道具を使って姿を隠した師匠を捕まえるという難易度の高いかくれんぼだった。師匠は常に移動しているし、即席の罠を置いて妨害してくるなど酷いものである。『得意分野を伸ばす』とか言ってたけど、そもそもそういう見つける事が得意になったのは師匠が普段から気配を殺して移動しているからです。

「知ってます。読んだこと、ある、です」

これまた妙な発言。箱入りのお嬢様育ちというやつなのかな?

「本好きなの?」

「…………嫌い、じゃない、です」

「私は好きな方かな。たまに師匠──お世話になってた人が色んな本持っててね、読めそうなのは読んだなぁ」

「…………図鑑、とか、魔導書、です」

「魔導書読めるんだ。凄いね」

師匠も私も魔術とは無縁だったから見たことは無いけど、ただ読むのにも魔術師としての技量が必要らしいことは聞いた事がある。この子優秀なんだ。…………あれ、緑系の髪に魔術といえば。

「もしかして、耳長族?」

びくり、と肩を震わせる。どうやら大当たりの模様。よく見れば髪の隙間からはみ出るように尖った耳が見え隠れしている。

「私初めて見たよ。耳長族で出歩いてる人ってあまり居ないじゃない」

「………………あいつら、ひきこもり、です」

声色に若干混じった嫌悪感。耳長族は他の種族からあまり好意的に見られていないとは聞いた事があるけど、身内にもこういう子がいるんだね。もしかするとこの子が特殊なのかな。それなら、こんな所に一人でいる事にも少しは納得がいくんだけど。

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