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魔除けと名の付くものほど禍々しい

本日宿泊する宿屋の玄関口。軽くくつろげるように椅子や机が置かれた一角で、地図を広げてニケちゃんと次の目的地への道筋を話し合っていると、宿屋の女将さんが小包を抱えて出かける様子が目に入った。厨房に声を掛けていたから、旦那さんは夕飯の仕込みでもしているのかな。まだお昼と言っても通用する時間だというのに、飲食を扱う現場はとても忙しそう。

「どうかしましたか?」

「ううん、なんでもない」

首を振ってニケちゃんの向こう側の光景から地図に視線を戻す。とはいっても、ここから次の町へは大きな街道が通っているので話し合う事はそんなに多くない。広く整備された道というのは巡回も多く、良くも悪くも変わったことが起こりにくいのです。

話し合いのあとは特に用事もないので、そのまま地図を使った駒遊びに移行した。街道沿いにいくつもの目印を置いて、賽子を転がして目印の上を自分の駒が進んでいく――つまり双六です。

地図上で一進一退の壮絶な競走が繰り広げられる最中、出掛けていた女将さんが戻ってきた。

「ん?」

そのまま厨房なり奥の部屋なりに向かうのかと思いきや、私達の方を見るとそのままこちらへと歩み寄ってきた。

「あんた達、ちょっといい?」

「っ!」

女将さんに声を掛けられてニケちゃんが驚いて硬直する。前からずっと思ってたけどこの子、他人の気配に鈍感だよね。気を抜いてる時は特に。

「どうかしました?」

「いやね。近くに工芸やってる職人がいてさ、そこに弁当届けてきたんだけど、若い子が泊まってるって言ったらお土産を持たせてくれてね」

そう言って女将さんが取り出したのは小さく梱包された二つの小物。

「この辺りの伝統工芸品なんだけどね。昔から魔除けの効果があるって伝わってる縁起物なんだよ。良かったら持って行ってくれる?」

「へぇー」

どんなのだろ。手に乗るくらいの大きさだし、邪魔にはならないよね。ニケちゃんは……まだ不意打ちの衝撃から立ち直れていないみたい。

「開けていいですか?」

「ああ、ちょっと外れやすいからゆっくりとね」

外れやすい?

「…………おお」

言われた通り慎重に外装を解いて箱を開けると、現れたのは動物の置物。黄色と黒と赤色で塗られたそれは、なんというかおどろおどろしいというか禍々しいというか、子供が見たら怖がりそうな顔をしている。地図の上に置いてみると、どうしてだか大型の魔物が暴れているような構図に見える。

「なんというか、魔も寄らないって感じですね」

「怖いよねぇ。子供に祝い物として贈るんだけど、大体の子は泣いちゃうんだよね」

でしょうね。

「でも慣れると可愛いく見えてくるんだよ。ほら、こうやって頭が揺れたりしてるとさ」

女将さんが頭をつつくと、ゆらゆらと頭が上下し始めた。うーん、可愛いというか、妙な面白味はある。

「気に入った?」

「はい、ありがとうございます」

せっかくのお土産なんだし、有難くいただきます。

「じゃあ、夕飯が出来たら呼ぶからね」

手を振って厨房に入っていく女将さんを見送っていると、ニケちゃんが人形の頭をつん、と突いた。ゆらゆら揺れる人形を見て頷く。

「…………ふむ」

つん。ゆらゆら。つん。ゆらゆら。

「ふふ」

気に入った……のかな?

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