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おしゃれは……
祭りの季節が近づき、ひときわ賑わう町並みと、行き交う人々を見てふと思う。
「ねぇねぇ、ニケちゃん」
「………………」
へんじがない。すでにひとみしりがはつどうしているようだ。
どうやら町の規模に反して多すぎる人波に警戒しているらしい。黙って私の後ろをついて歩く姿は、ひよこみたいですごく可愛いです。なでなでしたい。……頭に手を伸ばしたら払われました。痛い。
仕方ないので話を続ける。付き合ってだんまりは私の柄じゃない。
「おしゃれは我慢っていうけど、あれって嘘だよね」
通行人の服装――特に女性――を見る。
胸元を強調するようなひらひらした服や、裾地が膝上程までしかない一枚着など、我慢とは程遠い格好がばかり。気温が高くなってきたとはいえ、露出が目立つ。
「むしろ開放的だよね。我慢とは程遠いよね」
首を傾げる私に、ニケちゃんがポツリと一言。
「発情期なのですよ」
「………………うーん」
そうとも言えないし違うとも言い難い。
黙るつもりはなかったのだけど、結果的に黙らされてしまったのでこの話題は早々に幕を下ろした。