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プロローグ
これは、明治から昭和にかけてのとある外交官が記した日記を現代語に翻案したものだ。途中重要な個所で、著者の日記を引用する際には、原文を載せるかもしれない。
男の名は、九条道忠。最後の藤氏長者である九条道孝の庶子で、史実には登場しない。
彼の日記の特徴は、公家として伝統を守っていかなくてはならない、天皇を守護する「皇室の藩屏」とする「保守的」な面と、社会主義に憧れ、外国に追いつこうとする「進歩的」な面が併存していることである。
日記の対象は、彼の政治姿勢・外交官としての情勢分析から私生活上の出来事まで幅広い。まるで、読者を楽しませるかのようである。では、さっそく読んでみよう。