Chapter1: Dive to the game!-潜入- 1-1
SFとアクションの性質を持った作品です。近未来の日本が舞台です。
是非お楽しみください。
1-1
「最近はゲームも進化したものだな。人の電脳に直接ゲームの内容をダウンロード、ヴァーチャル・リアリティの世界で直感的に主人公を操作して疑似体験ができる。しかもネットで繋がって同時プレイなんて。昔はコントローラーなんてものを握って、テレビの前でゲームをプレイしていたものだが・・・。」と、俺が呟いていたら、通信でLadyに怒られる。
「無駄なことを考えていないで、任務に集中してください。あなたはもう、現場にいるのでしょう?」彼女は俺の女上司で、あだ名は”Lady"。若い女性のオペレーターで、本名は望月 玲子っていうんだが、いつも淑女のような態度で正しいことを言うから、俺たち捜査官の間では"Lady"と呼ばれている。
「そう怒らないでくれよ、"Lady". 現場って言ったって、まだ市場に入ったばっかりで人通りも多い。こんなところで薬の取引をやってるわけないだろ?」
「治安の悪い地域にいることには変わらないのですから、気を抜かないでくださいって言ってるんです!それと、"Lady"はやめてくださいって、いつも言っているじゃないですか!」
Ladyは俺よりも随分と若い女性だ。若いけれど成績は優秀で、バックオフィスから直接指示を出して、捜査を指揮・監督している。
「これは失礼しました、望月指揮官。今回の薬の取引は、電子ドラッグの配布だったよな?」
「そうです。取引が行われている疑いのある場所の座標データを送ります。取引場所に通じる細い道が表示されていますか?」データは電脳に直接送られてきた。すぐに3Dアプリで展開し、場所を確認する。2ブロック先を右・・・あの道か。
「あぁ、表示された。その細い道は肉眼でも確認できたが、その道に入る角に、いかにもドラッグをやってそうな奴がいるな。細い道に入っていったぞ。」
「情報提供者によると、その細い道から取引場所までは、最近人気のオンライン・ゲームに接続して進むことになるそうです。その先は廃虚となっていて、明かりはなく、取引の行われる夜に肉眼で進むことはできません。ですが、そのゲームのマップと現実の道はシンクロしていて、ゲーム内を進んで行けば、取引場所まで到達できるでしょう。」
「懐中電灯で照らして行ったらダメなのか?」
「売人はゲームに接続している者と現実世界を見張っている者でチームを組んでいます。薬を買いに来る人はゲームを使って取引場所まで行く決まりになっているので、もし懐中電灯で照らして入っていく者がいたらすぐに怪しまれて逃げられてしまいます。ですから、絶対にダメです!」
なるほど、電子ドラッグを売っている奴は大抵おつむの弱い奴だと思っていたが、賢い奴もいたもんだ。
俺が感心していると、Ladyはさらに続ける。
「こちらでそのゲームにログインするためのIDとパスワードは用意しました。それを使ってゲーム内に潜入してください。」
お読みいただきまして、ありがとうございました。