協力
皆が呆然とする中、真っ直ぐ見つめ返してくる少女。唖然とするサクラ、目を見開き固まるコウ、理解が追いついていないヒイラギ。そして――
「…っく、ははっ!はははっ!」
一人爆笑するハク。
「あー、面白いなぁ……。ねぇ、ヒイラギ君?」
「え……あ!貴方、兵士の……!」
声のするほうを見ればいなかったはずの青年、ハクが扉にもたれかかってキリクを見てくすりと笑った。キリクも予想外だったのだろう、目を丸くして驚いている。そんなキリクを見て、安心させるかのように微笑みかける。
「ハクと申します。以後、我が名をお忘れなきよう姫」
「……兵士である貴方までもが裏切り者だったというわけね」
その微笑に取り合わず、冷たく言い放つ。しかしそこにあるのは怒りでも悲しみでもない。ただ冷静に分析しているだけ……。淡々と、現実を受け止めている。
「裏切ったつもりはないけど……軽蔑しますか?」
「いいえ、何も知らない私が貴方を軽蔑するのはおかしな話でしょう?」
「ヒイラギ君、君の誤算はここにあるんだよ」
ハクはまるでキリクの話を聞かずにヒイラギにからかうように話を振った。半分挑発するようだったが、ヒイラギはそんな挑発をさらりと無視してキリクを見つめなおす。
「姫さん、君には詫びないといけないね。君は僕が思っていた以上に強い女性のようだ」
「それは、どうも……」
「君がいいのなら、是非協力してもらいたい」
唐突にキリクの協力を申し出た。言い出したのはキリクとはいえ、本当にいいものかと疑ってしまう。
「ヒイラギ……?でも……」
「サクラ、僕の力が信用できない?」
不安げなサクラをなだめるように聞くと、サクラはふるふると首をゆるく振った。しかし、リーダーだとばかり思っていたコウの確認もなしに、ヒイラギは勝手に話を進めていく。部外者のはずのキリクのほうがオロオロするほどにあっさりと。
「コウ」
「……あぁ」
「協力してもらうといっても君の立場は変わらない。そこんとこはよろしく」
キリクはコクリと頷いた。
「キリク、お前はこの国を背負う覚悟はあるか」
何も喋らなかったコウが質問を投げかけた。キリクはさも当然のようにはい、と答えた。