部屋
連れられてきた部屋はこじんまりとした――といってもキリクにとってそう思えるだけで、実際は普通の部屋としてはやや広めの小奇麗な西部屋だった。生活に必要そうな家具はわりと揃っている。ベッドにタンス、ドレッサーまでもが置かれていた。黒を基調としたシックなこの部屋はキリクの好みだったようで、ふっと笑みを浮かべた。
「気に入った?」
「え、えぇ……」
不覚にも立場を忘れかけていたキリクはハッとし、素っ気ない振りをした。その様子を見て彼女はふわりとキリクに笑いかけた。
「サクラ。何かあれば言って」
それだけ言い残して部屋から出て行ってしまった。まだ何も聞きたいことを聞けていない。とはいえ、勝手にこの場から出るのは得策ではないと思ったキリクはベッドに身を委ねた。特別に心地が言い訳ではないが、安物というわけでもなさそうだった。キリクは自分で思っていたよりも疲れていたのかあっという間に睡魔が襲ってきた為、そのまま睡魔に身を投じていく。
――ここはどこ?
暗い、何も見えない真っ暗な空間に目の眩むような赤。
全てを塗り潰さんとする勢いで黒から赤へと染まっていく。
ぬるりとした感触が腕に這いずる。
――嫌だ。気持ち悪い。離して……!
逃れようと必死にもがくけれど、ぬめった感触は消えはしない。
誰?その答えは遠くに見える。アレがきっと答え。
でもその答えにはまだ、たどり着けない。
ここまで。つづきはまた今度。
その声でキリクは現実へと引き戻された。