祝宴
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月が雲に隠れ、暗闇が立ち込める夜。その闇の中にある煌びやかな空間。この夜、この暗闇が煌びやかなのは当然だった。17回目となるこの国の王女の誕生祭なのだから……。国王主催の祝いだ。当然ながら集まっているのは華族や貴族の身分の高い者ばかり。色彩鮮やかな食事に高価な贈り物。賑わう祝いの席でたった一人、憂いを露わにしてるの者がいた。それこそが今夜の主役である王女キリクだった。
「どうかしたか、キリク」
やや酒の酔いが回り始めたのか、頬を赤く火照らせた父がキリクの顔を覗き込んだ。祝いの席なのだ。恐らく彼も相当飲まされているのだろう。普段そんなに飲まないから尚のことだ。そんな父の心配をしつつ、キリクは取り繕うように笑みを浮かべて
「少し疲れただけよ。気にしないで、パパ」
当たり障りのない答えを返した。その返答に少し迷ったようだったが、やがて部屋で休むように促した。近くにいた側近に護衛を言いつけて奥の部屋へと主役は姿を消した。
キリクは扉の傍に護衛を置き、寝室で睡眠をとることにした。自分で思っていたよりもずっと疲れが溜まっていたのか、あっという間に睡眠の波に呑まれた。
――深い意識の底へと落ちている間に悲劇が起きていく。