プロローグ
夏まっただ中
世間の中高生は夏休みということで
それっぽい話を書くことにしました。
多分、二度とあんな出会い・・・いや恋とでもいうべきか?
恋と例えていいのだろうか?うーん、分からん。いや、恋なのだろう。
今でも忘れるはずがない。ほんの1秒前、言い過ぎたか。ほんの5秒前のことのように
思い出せるほどに脳裏に焼き付いている。あの後姿、声。よく言われるような吸い込まれるような
大きな瞳。そしてなんといっても笑顔。まぶしかった、実に。
あぁ、きっと恋だった。こんな俺でも人?を本気で好きになったのは人生初であり最後かもしれない。
だからきっと初恋だった。
高校三年生とは非常に不安定な精神状態であると俺は断言する。
子供から少しだけまた一つ大人の階段を上るからなのかもしれない。はたまた、人生の大きな岐路に
立っている渦中にいるからかもしれない。どちらも正解だろう。ちなみに俺はどっちつかずだ。
むしろ、子供のままでいたい。童心の心を忘れないって結構大事な気がするんだ、うん。
見た目は大人、心は童心?子供?いいじゃないか、ストレスもたまらなそうだし。
「はぁ」
思わずため息がこぼれる。高校に入学してもう三年にまでなってしまった。
若いうちは時間の流れが速く感じるものだとよく言われるが本当なのかもしれない。
入学当初は夢にまで見た高校生活。期待半分、不安半分というありがちな心境で
入学式に臨んだことをなんとなくだが覚えている。
しかし、そんな淡い夢は漢文の「矛盾」に出てくる矛なんかよりもずっと鋭く。
「現実」という刃で貫くのだ。
よく、アニメや漫画で屋上で告白したりされたりだとか、はたまた屋上から美少女の歌声が聞こえて
きただとかそんなものはありえない。もしあるなら、そんな幻想ぶち壊す。絶対、にだ。
屋上なんておそらく全国的に見ても卒業生の九割近い生徒が謎の空間、憧れの場所として
巣立っていくことに違いない。まぁ、まずうちの高校に屋上など存在しないが。
え?戦後の青空教室みたいになっているのかだって?
もし、そんな風になっていたなら学校に来るのを躊躇う。いや、来ない。やめる。一択だ。
わが校は見事すべての校舎の屋根が西洋の城のように鋭角にとんがっている。
そのため、入学したときから先ほどあげたようなことが起こるなんて愚かなことは
考えずに済んだ、が。
しかし、おかげでもし屋上があれば!という妄想なら幾度となくするはめになった。
結局プラスマイナスゼロといったところだ。
あっ、これを忘れてた。恋人だ。高校生にもなれば、中学生の時にモテていたような
ヤンチャ系男子だけでなく、こんな俺にもスポットライトが当たるに違いないと思っていた
時期が僕にもありました。だが、実際として高校という小さな社会もそんな甘いものではなかった。
恋人の「こ」、彼女の「か」の字にかすりもしない程に女子とは無縁の生活だ。
バスケやサッカーでいうとカッコつけてシュートしたけど枠にすら当たらなかった感じだ。
どうだ、みじめだろ?いや、同情をあおっているわけではない。
俺が奥手なのが悪いのかもしれない。確かにそれもあるか・・・いや、否だ。
女子が俺の隠れた素晴らしい魅力に気づかないのが悪い。きっとそうだとも。
大丈夫、社会に出ればきっと彼女ができる。あれ、デジャヴ?