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恋愛ものっぽい話

いつか、遠くの未来まで。

作者: ひばり れん
掲載日:2014/06/28

どうしようもない馬鹿だとはわかっていた。

今まで生きてきた中でそれとなく、悟ってしまった。


私は、そこはかとなく馬鹿だった。



目に見えている愛情を見えないと言い、

真摯に思ってくれた人の言葉を疑い、

守ろうとしてくれた腕を私がばっきり折ってしまった。



『本当は、私のことなんかどうとも思ってないくせに!』



なんで、あんなこと言ってしまったのだろうか。



『もう、あなたなんて大っ嫌い』



あんなにも彼は、私のことを愛してくれたのに。

信じられなくて突き放してしまった。

もう彼は私を愛してはくれないだろう。





「やぁ」



そう、思っていたのに。


彼は私の前に現れた。

手には黄色い水仙の花束が握られている。



「なんで、」

「君を愛しているから、じゃダメかな?」

「だって、私は」

「君がいなければ、僕は生きてなんていられないんだ」



あはは、と乾いたような声をあげて笑う彼。

それが嘘ではないことに気付く。

火傷だろうか、水膨れができた手指。

水分を失った両手。

足首から膝にかけての青あざ。

どこをどうしたらできるのかわからないほどの傷。



「ど、どうしたの?これ・・・」

「君が帰ってきても大丈夫なようにご飯を作ろうとして、フライパンを握ったんだ」



そうしたら右手を大やけどした。そう笑って言った。

普通高温のフライパンになんて触らないだろうに。



「洗濯物を干そうと、二階に上る途中で五回くらい転んだんだ」



脛を強かに打ち付けて、青あざを量産した。

そう言うことだろう。



「君が、僕を守ってくれていたんだね」

「・・・・は?」

「僕は何にもできないけど、君は沢山できる」

「それは家事だけでしょ!私にだって、できない事ばっかりだもん」



つい勢いで弱音を吐いてしまった。

疑うことばかりで、信じることができない。

真実を見抜く力のない、馬鹿だからできない事ばかり。

彼の言うような万能性なんて欠片もない。



「うーん。僕にできることと君にできることは違うよ。

 ――だからまた一緒にいようよ。そうすれば、僕らはなんだってできるよ」



迷いなく言った彼は私に水仙の花束を渡してきた。




「もう一度、僕と一緒に暮らそうよ」




彼はもう「愛している」とは言わなかった。

前は沢山沢山言ってきたのに。

私が嫌だと、信じられないと言ったから。


黄色い水仙の花言葉は、「もう一度愛してほしい」。

それは、彼の精いっぱいの言葉を使わない告白。



「・・・・うん」



花束の中から、一本抜いて彼に渡す。



「また、一緒にいて」



零れそうなくらい目を見開いた彼は、そのまま私を抱きしめた。

全身で私を覆い、私の背を撫でる。

逞しい腕が力み過ぎで小刻みに震えていた。


言葉を介さずにも伝わるように、思い切り抱き付いた。


また彼の愛を疑うかもしれないし、家を飛び出すようなことをするかもしれない。

だけど、その度にこうやって彼を好きになる。

そんな毎日が続いていくんだろう。


願うことなら、死に別れる瞬間はお互い好きのまま――――。

柄にもなくそんな未来の話を考えた。






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