学校の七不思議
理は理科室を元通りにしたら許してくれた。諒は仲間にならないかと誘ったのだが、
「ここから出たくないから無理」
と断られてしまった。
しかし、理科室に来ればできるだけ協力してくれるとも言ってくれた。牧田はこうなることがわかって理科室へ行かせたのだろうか?順調に進むにつれ、そう思い始めたがそれでいいと思った。順調に進んでくれた方が助かる。そうすればいつか燈葉の元へと辿り着くだろう。
オカルト研究部の部室には牧田によって部員全員が集められていた。月と星がよく見える夜に。
「おい牧田。そろそろ俺たちを集めた理由を聞かせろ」
諒はもったいぶる牧田に苛立ち始めていた。
「わからないのかい。僕たちはオカルト研究部としてやらなくてはいけないことをやってないんだよ」
「なんだよ」
「それは…」
バンと後ろにあったホワイトボードを裏返す。そこには七つの怪奇現象が書かれてある。
「学校の七不思議を確かめることだよ」
牧田は子供のような純粋な目でそう言い放った。
歩く二宮金次郎、階段が増減する、鏡に吸い込まれる、人体模型が動く、真夜中にピアノが鳴る、音楽室の肖像画の目が動く、トイレの花子さん。
以上がこの学校の七不思議である。それを全て調べて回ろうというのが牧田の魂胆だ。
くだらないが、恩がある諒は断ることができない。そして、他のみんなも参加することになった。
まず最初は人体模型が動くというもの。なので諒はまたもや理科室に来てしまった。
ここには引きこもりの理がいるはずだ。牧田にもそのことはもう話してある。が、何食わぬ顔でぬす、借りてきた鍵を使い扉を開け探索し始める。諒から見るに前とあまり変わりがないと思うのだが、一つ気になるものがある。
それは理科準備室の扉の近くにあるロッカー。前はあったかどうか忘れたがこんなところにあるのは不自然だ。牧田たちもそれに気づきロッカーの元へと集まる。諒は他のみんなに目で確認をとり、全員頷いたのを見計らいロッカーをゆっくりと開ける。
そこにはやはり人体模型があった。そして七不思議の通りキリキリと音を立てこちらに動き始めた。
「うわ!動いたぞこいつ」
篠原が興奮と不安のあまり声を高らかにしてそう言うと理科準備室の扉が開きパジャマ姿の理が眠そうに目をこすりながら現れた。
「誰?…僕もう…寝てる。起こさないで」
「いや、だってこれが」
篠原が動く人体模型を指差すと理は何か納得したような顔をした。
「ああ…、これは僕が作ったロボットです」
「「「「「ロボット?」」」」」
牧田以外のメンバーは目を丸くして驚く。理はそそくさ人体模型の後ろにまわり、ポケットからドライバーを取り出しそれで背中のネジをとり諒たちに中身を見せてくれた。コードが沢山あって何がどうなっているのかはわからなかったがロボットである証明にはなった。
「すげーこれ全部お前が作ったのか」
篠原は目を輝かせ人体模型をベタベタ触る。
「うん…。材料集めから製作まで全部やった」
「これは驚いた。まさかこれほどまでに精巧な人型ロボットが見られるとは」
春芽は手を顎にそえ興味心身に見ている。三雲やルキナも同様に理を褒め称える。しかし、諒は別のことを考えていた。
それはこの人体模型ように、七不思議は学校の夜を自由に動ける理が原因なのではないかと。
「なぁ、理。俺たち今学校の七不思議を調べてるだが何か知らないか」
「まず…この学校の七不思議を知らないんですけど…でも教えてくれたら答えます…」
「そうかなら歩く二宮金次郎って知ってるか」
「二宮金次郎ですか…?それならこの人体模型をベースに作った警備ロボです…」
「じゃあ、階段を登った時と降りる時の段数が違うっていうのは」
「それは…そこを巡回する人のためにバリアフリーとして階段が自動的に変化するようにしました」
「鏡に吸い込まれるっていうのは」
「何かあった時用の隠し部屋の扉です…僕が作りました」
「ピアノが勝手に鳴るっていうのは」
「目覚まし時計の代わりです…」
「音楽室の肖像画の目が動くっていうのは」
「それは…僕が設置した監視カメラだと思います」
……。
……。
「全部お前のせいじゃねーか!!」
諒の雄叫びは学校中に響いた。
「学校の七不思議解明だね。じゃあ、部室に戻ってまとめをしよう」
「俺トイレ行ってくる」
「先に始めてるからちゃんと来てよ」
ルキナの言葉を背で聞きながら諒は一人暗い廊下を歩く。
洋式のトイレに座り済ましたあとに気づいたのだが紙がない。トイレットペーパーはもはや芯だけの状態。手元には何もないしこんな時間には誰もいないだろう。誰かを呼ぼうと思ったが携帯は部室にカバンごと置いて来てしまった。
考え悩んで頭を抱えている時、隣から誰かの泣き声が聞こえてきた。
(こんな時間に誰が?いや、そんなことはどうでもいい)
泣いている時に失礼だが諒にはもう手がなかった。
「おい。すまないがトイレットペーパーをくれないか。こっちは切れてて困ってるんだ」
暫くすると泣き声が止み、トイレットペーパーが投げられてきた。
「サンキュー」
これで諒は危機を脱することができた。
しかしトイレから出るとまた隣から泣き声が聞こえ始めた。
「おい、どうしたんだ。何かあったのか。お前は恩人だから俺にできることがあったら言えよ」
「ほんと?」
今まで声が小さくてわからなかったが、女の子の声で幼い感じだ。こんなところで迷子にでもなったのだろうか?
「ああ、話ぐらい聞いてやる。名前は?」
「花子です」
「そうか花子ちゃんか」
花子!?そう学校の七不思議はまだ一つ残っていた。トイレの花子さんが。