戦いへの招待状
「ついにこの日が来たか」
ミリオに届いた一通の手紙。それを読んで拳に力が入る。
手紙を送ってきた主はネルガルだ。
早速、ミリオは修行をしていた者たちを集結させて話をすることにした。全員が集まるのは一週間ぶりだ。
「お前たちを呼んだのは他でもない。ネルガルについてだ。実はついさっきそいつかは手紙が届いた。内容は俺を捕まえてみろ……それに奴がいるかもしれない場所が書かれている。順に会議室、保健室、家庭科室、二年G組の教室だ。ん?燿堂の姿が見えないんだが、まだアレスさんと戦ってるのか」
だが、そんなミリオの淡い予想は慌ててこの場に現れたアレスによって打ち砕かれてしまう。
「大変だ。燿堂のやつ、手紙の話を影で聞いてたんだが場所を聞いたら走っていたぞ」
「そ、そんな……。こんなの罠に決まってるのに。でもこれ以外に情報はないし、ここを全部回るしかないのにこれじゃあ計画が狂うじゃないか」
誰がどこに行くがでこの戦いの結果は決まる。だから慎重に決めていかなければならなかったのに燿堂のせいでミリオの計画が台無しとなってしまった。
「大丈夫ですよ。あいつの行き先なら会議室しかありませんよ。俺たちはそれ以外のところに行けばいいじゃないですか」
口を開いたのは計画を狂わした燿堂の幼馴染である京だった。
「それは何か根拠があって言ってるのか、京」
「ないです!」
「そんな清々しいほどハッキリ言わことじゃないだろ。俺は確証がほしいんだ。戦力は均等に分けたいからな」
「それでもあいつは会議室に行きますよ。昔から自分の縄張りに入られるのは嫌いだし、相手が学校を荒らしてる奴らとなるとなおさらですよ」
「……分かった。それならお前の言うとおりにしよう。何人かに別れて行動するからすぐに決めてくれ」
誰がどこへ行くか?
それをミリオではなく、京たちが決めることになったのはこれから始まる戦いは本来は神だけで決着をつけなくてはいけないことだからである。
修行はその罪滅ぼしで、どちらにも属さないミリオは自らこの戦いに参加することをずっと前から決めていた。
教室には京と紘一、それと千冬。保健室にはミリオ。家庭科室には春美とか影山。
だが燿堂は勝手にそんなことになったことは知らない。というよりもどうでもいい。
目的はただ一つ。会議室にいるらしき邪魔者を排除する。勿論他の邪魔者もそいつを倒したら同じ目にあわせてやるつもりだ。
そして燿堂は平日なのにも関わらず、ひと気のない学校の中へ入って行くと歓迎をしてなのか何処からともなく鈴の音がしたが燿堂はそれに気づかないまま真っ直ぐに会議室へと向かった。
「人払いの鈴、ですか?」
天界から人間界へと向かう最中、紘一はミリオから聞かされた神具の名を言っていた。
「そうだ。師匠の奥さんのルキナさんが能力でレプリカを作ってよく使っていたらしい。その鈴の本物がネルガルが最近手に入れてたらしい」
「それって何かまずいことなんですか?もしかして超強力な神具……」
自分が想像できる超強力なものを連想して生唾をゴクリと飲む紘一だが、その心配はないとミリオは首を横に振った。
「いや、どちらかというと便利な神具ってところだな。一度鳴らせば辺り一面の人払いの結界ができて、一般人は入ってこれない。それに本物だから持続時間は長い。まあ、要するに好きなだけ暴れられるようになる鈴といったところで殺傷能力は一切ないから安心してくれ」
「なるほど。一般人が巻き込まれないとなるとこっちにとってはプラス面ですが、アレスさんとか入れるんですか?」
彼女もミリオ同様にこの戦いに参加する気満々なのだが、なんとなく入れそうにない雰囲気がしてならないのだ。
「さあな。俺も本物は見たことがない。レプリカとは違う能力があってもおかしくはないが試してみなくてはわからん」
「はっはっ。大丈夫だ心配ない何事もないことを信じていればいいのさ」
高らかに笑うアレス。だがこの後、人払いの鈴には人物を指定してその人以外は神であろうが入らせない結界能力があることを知ることになる。




