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神と仮面のスピリチュアル   作者: 和銅修一
クレイジーギア・ダンス
48/52

熱気と冷気

「随分と騒がしいけどこれ何処から?これじゃあゆっくり昼寝もできないよ」

「お、屋上の近くからです!」

 呑気にあくびをする燿堂に風紀委員の一人が背筋を伸ばして大きく、はっきりと、簡潔的に答えた。

「そう……。休み時間はあと数分で終わる。僕はそれまでこの騒ぎを沈めておくから君らは誰も屋上に近づけさせないでおいて。それと生徒たちが混乱してるだろうからそれもどうにかしておいてくれ。指揮は副委員長に任せるから」

 重かった腰は軽くなって心の中で笑いながら風紀委員が使っている会議室を出て行った。

「よし!委員長の命令通り動くぞ。生徒を抑える班とと屋上へと続く道を塞ぐ班とで騒動を鎮めるぞ。総員急ぎ足で働け!」

 胸筋が特に鍛えられていて大声をあげて呼びかけるのは副委員長。燿堂にはかなり信頼されているオールバック男。

「「「「「は!」」」」」

 まるで軍隊のような返事をしてさそれぞれ決められた仕事をするためになるべく音を立てないように現場へと急いだ。




 そして騒動の原因である双子たちも動き出していた。

「くらえ先手必勝ファイヤー!」

 ご自慢の火炎放射攻撃。

 京に放ったそれよりも鋭くて素早い火炎放射でもミリオは顔色一つ変えず、華麗にかわして左義の懐に入ると右拳を腹にめり込ませた。

「ぬぐはーーーーーーー!」

 思いっきりくらった左義は顔を歪ませて大声でオーバーリアクションしながら吹き飛んだ。

「よくも左義を!くらえブリザード」

 仇とばかりに極寒の気を放出させて氷のツブテが幾つも襲いかかってくるが間をすり抜けて一気に距離を詰めて、仁右は腕を重ねて盾とするが拳の力に敵わず左義と同様に吹き飛んだ。

「す、凄い……。あの双子をあっさりと吹き飛ばすなんて」

 今だけの光景を見ると相手が弱いように見えしまうがそうではない。それ以上にミリオが強いのだ。

「ふ、ふざけるな。確かに一発もらっちまったが負けたわけじゃない」

 先に起き上がったのは左義。後の方に殴った仁右の時は少し体制が崩れていたのであまり大きなダメージにはならず、左義の言葉が終わると同時に起き上がった。

「それはいいけど。そろそろ気づいてくれないか?お前たちはもう俺の能力をくらってるんだぜ」

「は?何を……!」

 促されてふと見た横には白一色となった自分の守護霊があった。もちろん仁右の守護霊もだ。

「いいか、これが攻撃=能力の発動という流れだ。当てはまる力を持ってるのは京と燿堂ぐらいだけど、これは戦いの中で大きなアドバンテージとなる。攻撃、能力の片方だけじゃなくて両方を使うんだ。まあ、これはそう難しいことじゃないけどな」

 歯車の回転攻撃。刀により物理攻撃から闘気による逃亡を不可能にする。

 どちらも不具合なく能力は作動しているからこれについては大丈夫ということなのだろう。

 それよりも今はミリオの能力。殴った双子の守護霊が白くなっているが、それ以上の変化はない。

「何なんだこれ?サッサと解除しろ!」

「そんな事するわけないだろ。だけどあえて言うなら戦いをフェアにする能力かな」

「意味わかんねーよクソが!」

 曖昧な解答に腹を立てた左義はすかさず火炎放射を打ったがそれも白い。

 しかも、紘一のところまで届いた熱気が一切してこない。

 避ける必要がないと左腕に霊力を集めてそれで防いでみせた。

「無駄だ。俺は能力を守護霊の能力を無効化させる力だ。もちろん気も封じさせてもらった。つまり霊力しか使えなくなる。それが俺の気の能力、アジャストだ」

 これならば相手がどんなに強い守護霊や気を持っていても単純な力比べができる。

 確かにこの力は戦いをフェアにするものだ。

「ふん、何だ色が変わったから少し焦ったがそれだけのことか。ならばお前を霊力だけで倒せばいいこと」

「そうだ。霊力だけで倒してやる」

 しかし、相手は二人。一人で相手をするのは部が悪すぎる。

 唯一無傷な紘一が加勢に駆けつけようとするが、またもや右手でそれを拒否した。

「大丈夫だ。君たちは見ていればいい」

「ほほう。一人でやるつもりか。なるば敬意を込めて最終奥義でトドメをさしてやる。仁右いくぞ!」

「おう、左義!」

 お互いの名前を呼び合った双子は自分たちの守護霊を前に出してその二体の距離をできるだけ縮めて、数秒にわたって息を吸い込ませた。

「フヴイソントルネーーード!」

 大きく吸い込まれた空気は守護霊の中で圧縮されて霊力として吐き出されるがそこには炎や氷、トルネードなどの要素は一切なく渦状の白いものとしてミリオに襲いかかる。

 それに対抗するためにミリオがとった行動は腰を落として拳に力を込めて前に突き出すだけ。

 たったそれだけの動作でフヴイなんちゃらという技は跡形もなく消し飛んで、双子も消えていた。

 ついでに殴った先にあった壁も。

「一体これはどういう状況?」

 ようやく着いた燿堂はその光景を見て、首を傾げた。

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