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神と仮面のスピリチュアル   作者: 和銅修一
クレイジーギア・ダンス
34/52

運のいい後輩

「そうか千冬も守護霊使えたのか」

 土曜日の昼。京は紘一と千冬を自分の部屋へ招き入れて事情を説明していた。

 実は千冬は守護霊が使えた、という真実をだ。話によると千冬は二年前から守護霊を使えるようになっていたようだ。だから京や燿堂のような気霊ではなかった。

「でも千冬の守護霊は凄いな。傷を一瞬のうちに治しちまうなんて」

「うん。でも一切戦えないんだけどね」

 千冬は申し訳なさそうに笑う。

「大丈夫さ。代わりに俺たちが戦うからな」

「“たち”って俺もいれている?!」

 紘一はその京の一言を聞き逃さなかった。

「お前もあの木の関係者の一員だ。守護霊がいつ発現してもおかしくはない」

 レックが口を開ける。もちろん千冬にはこのしゃべる指輪、元仮面のその他のことは全て話した。そして快く協力してくれることになった。

 そして話はこれからのことに移る。

「そうだ。もしかして守護霊使いの人が後輩にいるかもなんだけど」

 千冬は授業の時のように手をあげて発言した。




「あれがその後輩か?」

 京たちは日曜日にその後輩がいつも通っているという図書館から出た彼女を追跡している。

 彼女は一年B組の飯山(いいやま) 春美(はるみ)。名前の通りの綺麗なピンクのポニーテールで、その小柄な体型は守りたくなる魔法がかかっているようだ。と、男子生徒に人気のアイドル的存在。だがその反面、逆恨みで女子からのいじめが絶えないという。

「さてどう調べるレック」

「何もしなくていい。彼女の周りをよく見てみな。前闘った燿堂という男と同じように青い気が流れている。まだ守護霊を扱えていないか、そういうリスクを負わないと使えない代物なのか?どっちにしろ守護霊使いなのは確かってことだ」

「じょあ、早速事情を説明して仲間になってもらおう」

 紘一が身を乗り出し、一歩前に出ようとしたが

「ちょと待て。あいつが敵だったらどうする。とりあえずこのまま尾行して様子を見ようぜ」

というレックの冷静な判断による作戦説明によって阻まれた。



 尾行している際、少し暇だったので京は気になっていたことをレックに質問することにした。彼なら何でも知ってそうだからだ。

「レック、いろいろ聞きたいことあるんだけど、例の木のこととか何かわかった?」

「ああ、まずあの結界のことだがあれは守護霊使いと、その素質があるものしか入れないらしい。その証拠にカタブツくんとツンデレちゃんは入れただろ」

「ちょっと、ツンデレちゃんって誰のこと!?」

 千冬は拳を握りしたまま、獣のように鋭い目でレックを睨みつけた。

「じゃあ、中庭に入ってる奴を見つけたら警戒しておく必要があるな」

「それだけじゃない。あの木はあくまで気霊という類の守護霊しか発現させることはできない。その他の普通の守護霊が敵にいるかもしれないからな。警戒は常にした方がいい」

 あることに気づいた。話に夢中でここがどこなのか今気づいた。

 ここはひと気がない細道だ。

「出てきて。そこにいることは知ってる…」

 春美からはピンク色の(きり)が流れ出ている。これが彼女の守護霊なのだろう。燿堂のような攻撃的なものではないので少し安心した。

 そして京は壁に隠れるのをやめて、戦いの意思がないことを両手をあげて証明した。他の二人もそれに続くように手をあげながら出た。

「あなたは確か、加賀村先輩ですか?私に一体なんの用ですか?」

「いやな。この霧、つまり守護霊に関することについて話したいんだ」

「先輩…もしかしてこれ…知っているんですか?」

 どうやら春美はこれが守護霊だということを知らないまま、使っていたらしい。

「ああ、俺たちがお前を尾行していたのもそれのことについて話したいことがあったんだ」

 京は守護霊のこと、中庭の木のこと、守護霊使いを狙って行われている殺人事件のことを詳しく話した。


「じゃあ先輩たちはその殺人犯を探しながら守護霊使いの仲間を探しているんですね」

「まあな。もし迷惑じゃなかったら君にも仲間になって欲しいんだ」

 京は手を出し握手を求める。春美も手を差し出し握手をしようとしたが途中で止まった。

「先輩たち。少し動かないでいてください」

 ピンク色の霧が発生する。

「え?」

 空から鉄柱が降ってきた。工事していたところのものが何かの拍子に落ちてきたのだ。

 垂直に落ちてきたその鉄柱は土煙をあげる。

「げほげほっ!」

 京は奇跡的に無事だったが鉄柱が落ちて、あがった土煙が肺に吸い込んでしまった。

 周りを見渡しすと、みんな鉄柱に当たることなく無事だった。もちろん春美も。

「これが私を守ってくれる運気の霧。ルックミストです。これからよろしくお願いします。京先輩」

 鉄柱に囲まれた中、春美は握手をした。

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